はかない三か月
@Napoleon_tk
はじめの一歩
彼氏ほしい、がなつみの口癖だった。彼氏ほしい同盟を作って、彼氏ができたら、と幻想を膨らませる日々。今日は、そんな同志たちと、学校にいる。冬休み前で、浮かれた生徒たちで授業は騒がしいけど、私にはそれがどこか遠い世界での出来事に思える。あれから、一週間。まだナポとの記憶はシャボン玉となって、たびたび頭の中を飛び回る。その一つ一つに、私たちが映っている。今日も、どこからともなく飛んできたシャボン玉が頭を満たしていく。(まずは、すべての始まりとなった、インターンシップを映したシャボン玉を手に取る。)
「皆さん、ぜひ目を通して、興味がある職場がないか確認してみましょう。」
私は、周りのみんなはまるで道端の野良猫を見るような目つきでそのプリントを眺めているが、私は意外とこういうのに興味がある。
なんだか、自分の知らない世界を見れるようで、楽しそう。
もうちょっとインターンシップ先を詳しく見てみようと思ったが、その前に隣の席の子の意見を求めてみる。
「ねえねえ、みゆうちゃん。インターンシップどう思う?」
夏美は、私たちが組んだ彼氏ほしい同盟の一人だ。同盟にはもう一人、教室の後ろの方にいるみんなも含まれている。みんなもいる。
「え、どうしよう……」
みゆうは今にもカバンにしまいそうになっていたそのプリントを、もう一度引き上げて机の上に広げる。
「行き先次第って感じかな。なつみはどう思うの?」
ちなみに彼氏欲しい同盟とは、私たち 3 人が組んだ同盟で、普段は「もし彼氏ができたらどうしよう」という話で盛り上がっている。
「私は迷ってるけど、結構こういうのに興味あるかもしれない。」
私は、さっき思ったことをそのまま口にしてみる。
「うん、なるほどね。確かに先生が言ってたように、もう職場に出るのも近いし、ちょっとその空気感にも触れてもいいかもしれないね。」
私は、教室後方にいるもう一人の同士、みなにも目配せをしてみる。
みなは極端につまらなそうな顔をしていて、その目はプリントの上ではなく、教室の窓の外、あさっての方向を向いている。その手は艶のある長い髪を、せわしなくくるくるといじっている。
なつみもみなの方を見ていたようで、二人で顔を合わせて「あれダメだ」と笑い合った。
私と夏美はインターンシップに参加することにし、みんなについては触れなかった。みんなについては言うまでもない。
私はインターンシップ先を見回った結果、「これがいいかな」と、直感でいいなと思ったものを選んだ。
最近規模を拡大している UNO CLOTHING だ。UNO クロージングだ。
みんなもよく使っているこのアパレル店。成功の理由が知りたいっていうのもあるし、単純に身近だから取っ付きやすいっていうのもあった。
対してみゆうは、同じくファッション関連を選んでいたが、あいにくデザイン方面の職場を選んでいて、行き先は異なっていた。
ただ「頑張ろうね」と言い合ったところで、1 時間目が始まるチャイムが鳴った。私たちはプリントをしまい、授業の用意をする。
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