隻眼のジェノサイダー──殺戮自動人形に殺されかける俺。

夜缶

荒野の機械生命体(……と殺されかけの俺)

いきなりだが俺は今、殺されかけている。


そんな殺されかけの俺がいる場所は荒野。


周囲には、無数の死体がゴミのように散らばっていた。


その死体の正体は、突如異世界からこの世に出現した魔物と呼ばれる化け物だ。


きっかけは、2050年代後半にて現れた謎の要塞。


そこからゴブリン、ガーゴイルやスライム、ドラゴンなど様々な魔物が人々を襲いはじめた。


ファンタジーでしか見たことのない怪物達が、現実世界に現れやがった。


その謎の要塞を、人々はある日を境に“ダンジョン”と称した。


そして奴らは今日まで人類の敵として立ちはだかり、人々を苦しめてきた。


しかしそんな彼らの無惨な姿からは、とてもじゃないがそんなことは信じられないことだろう。


彼らがそんな姿になった原因は、そのゴミ山の上にいた。


そこには特徴的なアホ毛を揺らし、刀を右手に持った1人の【左眼】のない少年のような者が突っ立っていた。


奴はいわゆる戦闘兵器で、異世界から来た魔物を駆逐するために生まれた。


──なのだが、今の奴はゾンビのようにただよっている。


「コロスコロスコロス! マモノ、コロスゥ……!」


そんなことを呟いてやがる。


周囲にはもう、魔物はいない。


いるのは奴と、死体を死角にして隠れている俺だけだ。


奴にはどうも、俺が魔物に見えているらしい。


いやいや誰が魔物だよ。


殺戮マシーンか己は。


……実際そういう目的のために作られたから、間違ってないな。


なんてつまらん冗談を言っているほど、余裕もないのだが。


なんせ既に俺は、奴から一発食らって出血状態だからな。


普段からあんな殺人鬼のような雰囲気はない。


むしろ大人しく、素直なはずなのだが戦いが始まってからずっとこんな調子だ。


事前にリミッターを解除して戦う兵器だとは聞いてはいたが、ここまでとは思ってもいなかった──。


「ミツケタァ……!!」


そんな悠長なことを考えた瞬間、味方だったそいつが俺に刀を振り下ろしてきやがった。


「あっぶっ!!?」


「シネェ!!」


「だからちがうっ──ってぇ!?」


弁明しても刀を振り下ろすのをやめない。


急に口悪いなこいつ。


リミッターを解除したとしても、人が変わりすぎだ。


あの変態博士、どんなプログラム組んでやがるってんだ。


どうしてこんな状況になったんだっけか。


時は数時間前に戻る──。




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