第17話 試練の連鎖
影の王を倒した先、深層の通路はさらに複雑に入り組んでいた。石の壁はひび割れ、古代文字が光る箇所と闇に沈む箇所が交互に現れる。空気は冷たく、湿気が肌にまとわりつく。
「……ここからは、さらに警戒が必要だな。」
キースは剣を握り直し、三匹の猫型モンスターに目配せする。ミィ、黒猫、シャオも身を低く構え、周囲の異変を敏感に察知している。
通路を進むと、突然床が沈み込み、微かな振動が全体に伝わる。遠くから、不規則な音が響き、天井からも何かが落ちてきそうな気配がする。
「……また罠か。」
キースは小さく息を呑み、猫たちの動きを確認する。
【まねきねこ、発動】
【対象:ミィ、黒猫、シャオ】
猫たちは前に出て、床の凹凸や微妙な振動を察知する。ミィが左、黒猫が右、シャオが後方で警戒し、キースに安全な道を示す。
通路の奥では、次々と異なる試練が現れる。圧縮空気の矢が飛び交う罠、魔法陣による石弾、突然落ちてくる天井の落石――すべてが連鎖するように動き、通路全体が一つの巨大な試練の迷宮となっていた。
「……くそ、連鎖してる!」
キースは息を整え、猫たちの動きに合わせて慎重に剣を振る。
ミィは前方で罠の動きを誘導し、黒猫は側面を確認、シャオは後方から防御と支援を行う。猫たちの連携によって、複雑に仕掛けられた連鎖の罠を一つずつ攻略していく。
「……これなら、なんとかなる!」
キースは魔法石の力を剣に込め、罠や障害物を破壊しながら進む。
だが、迷宮の奥で巨大な石扉が現れた。石扉の前には、圧倒的な魔力の結界が張られている。触れれば強力な攻撃が発動する可能性が高く、迂闊に進めない。
「……ここも試練か。」
キースは小さく呟き、猫たちに指示を送る。
ミィが結界の弱点を探し、黒猫が周囲の魔法陣を確認、シャオは後方で警戒しつつ、キースに最適な攻撃ルートを示す。
「……よし、行くぞ!」
猫たちの連携に従い、キースは魔法石の力を集中させて剣を振る。結界の一部が割れ、石扉の奥に続く道が開けた。
「……ふう、連鎖の試練を突破できたな。」
キースは剣を下ろし、猫たちの頭を撫でる。三匹は小さく鳴き、互いに体を擦り合わせて安心している。
深層の迷宮では、試練が連鎖し、予想外の障害が次々と現れる。しかし、最弱と呼ばれた自分でも、仲間との信頼と連携があれば乗り越えられる――キースはその確信を胸に、再び奥へと足を進めた。
「……行こう、ミィ、黒猫、シャオ。」
三匹は小さく鳴き、キースの周りに集まる。
試練の連鎖――それは深層の本質であり、最底辺探索者と猫たちの絆を試す舞台でもあった。
だが、二人と三匹は恐れず、一歩ずつ確実に深層の奥へと進んでいったのだった。
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