第14話 迫る影の群れ

隠された部屋で得た知識と魔法石を携え、再び深層の通路を進むキースと三匹の猫型モンスターたち。空気はさらに冷たく湿り、薄暗い石壁に映る影が不気味に揺れている。


「……なんだか、背後の気配が強くなってきたな。」

キースは小さく呟き、剣を握り直す。ミィ、黒猫、シャオも耳をピクピク動かし、異常な気配を察知している。


通路の奥から、黒い影がうごめきながら迫ってきた。小さな群れで、数十体にも及ぶ影のモンスター――影霊の群れだ。


「……くそ、これだけの数か!」

キースは息を整え、猫たちに目配せする。


【まねきねこ、発動】

【対象:ミィ、黒猫、シャオ】


三匹の猫型モンスターは前に出て、影の群れの注意を引きつける。ミィは左側、黒猫は右側、シャオは後方から群れを翻弄するように動く。小さな体が、影の群れを惑わせる軌跡を描く。


「……よし、チャンスだ!」

キースは隙を見つけ、剣を振る。影霊は半透明で捕らえにくいが、猫たちの連携によって動きを制限され、攻撃の隙を作られている。


影の群れは数が多く、押し寄せる力は圧倒的だ。しかし、猫たちは互いに体を擦り合わせ、連携を崩さない。ミィが前方で翻弄し、黒猫が側面を抑え、シャオが後方で守りを固める。


「……まだ、いける!」

キースは全力で剣を振り、魔法石の力を借りて攻撃を増幅させる。微かな光が剣先を覆い、影霊たちを次々に消し去っていく。


戦いは長引いたが、三匹の猫型モンスターとキースの連携は完璧だった。影の群れは徐々に減り、最後には全て消え去る。広間には、キースと三匹だけが残った。


「……ふう、危なかったな。」

キースは剣を下ろし、三匹の頭を撫でる。猫たちは小さく鳴き、互いに体を擦り合わせて安心している。


広間の奥、影霊の残像が薄く揺れる。

「……でも、これで少しは自信がついたな。」

キースは小さく笑みを浮かべる。仲間がいることで、最弱と呼ばれた自分でも、この深層の脅威に立ち向かえるのだ。


通路の先には、さらに深い階層への入口が待っている。影の群れを越えたことで、次の試練への道は見えてきた。


「……行くぞ、ミィ、黒猫、シャオ。」

三匹は小さく鳴き、キースの周りに集まる。


迫る影の群れ――それは、深層の恐怖のほんの一部に過ぎなかった。しかし、最底辺探索者と猫たちの絆は、闇に立ち向かう光となり、さらに深層の奥へと二人と三匹を導くのだった。

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