俺だけXXな世界で

すとれい

第1話 ようこそ新たな人生へ!

俺は先ほど女神?から貰った一通の封筒を開いた。1枚の紙が入ってた。

先天性の疾患で殆どが病院生活で人生が終わってしまったからそれを悔やんで第二の人生を歩ませてくれるんだと。なんと高尚なお心じゃないっすか。


「えーっと?なになに??」


==========

おめでとうございます!水科 春翔(みずしな はると)様

簡潔にですがこの用紙の説明をします。この紙に書いた技術や能力が現実のものとなります。

未知のものでもあなたの発想でどんなものでも実現可能です。

A (消費素材)×B (要素・概念)=C (技術・能力)でございます。

以下の空欄を埋めてください。C欄の技術・能力が作られます。

空欄を埋めた時点で確定する為、1度書いた文字はどんなことをしても消すことができません。誤字脱字の無い様にお願いいたします。


A(    )× B(    )= C(     )

A(    )× B(    )= C(     )

A(    )× B(    )= C(     )

A(    )× B(    )= C(     )

A(    )× B(    )= C(     )


==========


フッ…なにこれ。


「私の力の及ぶものでも無いの…」「何が入ってるかわからないわ」「でも大丈夫。きっとあなたなら使いこなせると思うわ!」


とか言ってたものが、簡易的な説明文とアホみたいな数式の5行かよ。

アホらしい。


紙から目線を外し、街の景色を眺める。

ここは人口26万人ほどのれうどるーら?とかいう小さな惑星らしい。

「文明が地球並みに発達しているから、あなたがずっと夢見ていたお外に近いと思うわ!」とかいう女神の言う通り、夢見た世界が広がっていた。ドラマとかアニメで見た日本の景色に近い。

思い描いていた場所よりは少し田舎っぽいけれど、街路樹が立ち並び雑貨屋、服屋、花屋、陶器屋などの生活品を出しているお店が並んでいる……わぉ。おしゃれな雰囲気…あそこは飲食店だろうか。香ばしい食欲を唆る匂いと人の出入りが目立つ。


それよりも、すごいな…!!この体。50m近く歩いているのに、頭も心臓も痛くない。吐き気もない。まだ歩ける。歩きたい!!なんて最高なんだろう!

優しく温かい気持ちの良い日差しも、ピンと冷たい日陰も、何もかもが俺を祝福している様だった。


世界がどうとか、因果がどうとか、救えとか理解し難い責任を押し付けられて飛ばされた地だけれど……なかなか悪くない。もう少しここらを散策してどこかで飯でも食べに行こうかなとキョロキョロしていたら、真っ直ぐ前から視線を感じた。思わず俺も見る。


赤いフードを被った子供がすごい表情でコチラを見ていたのだ。

え?ごめん。どんな感情???気持ち悪……


俺もマジマジと見ていたら、子供がコチラに突っ込んできた。全力で向かってくる。

左額に傷、睨みつけるかの様な真剣な琥珀色の瞳がこちらに近付いてきた。

咄嗟に避けようと体を逸らしたら、持ってた紙を奪われた。女神から受け取ったものなのに!!指先が空を掴む。間に合わなかった。


「あっ!!ちょっと待て!!!コラ!!!」


俺は慌てて追いかけた。ただひたすら背中を追う。どのくらい路地を曲ったかわからない。

距離がだんだん遠のいていく。心臓が収縮し、冷たい外気に肺が裂かれる。喉から血の味がする。……気持ち悪い。


曲がり角を進んだ先で見失った。

クソ…どこ行ったんだよ。。。辺りを見渡す。


「いた!! あんなところに!」


あのクソガキは自販機にへばりついていた。

俺は残りの体力を振り絞って全力で駆け出す……うわっ。違う。なんてことだ!へばりついていない!!!あいつ自販機を台にして紙に何か書いている!!!


「おい!!!コラ!!やめろ!!!」


クソガキがビクッと体を震わせこっちを見る。その拍子に紙がハラリと揺れ落ちる。

クソガキは暫し戸惑った後、この場を後にして全力で逃げて行った。


「ったく…なんなんだよあのガキ……」


自販機から1mメートル程手前まで、風で流され落ちた紙を回収する。


うわ…1行目埋められている読めねー…てかこれ文字じゃないじゃん。試し書きの線みたいな棒じゃん…無効だろ畜生!


俺の5個しかない貴重な能力枠の1つをクソガキに落書きで埋められたのだ。許しちゃいけねぇ。


徐々に自販機に近づき、封筒、先端に星型のチャームが付いた子供っぽいガキの所有物と思われるペンも拾う。

あのクソガキ、慌てすぎだろ……色々落としすぎだと思う。


「_が小さくなって帰ってきた!

可愛いー!スカイジャンパーのミニミニフィギュア絶賛発売中!」


ビクッとなり、咄嗟に音のする方を振り返った。

なんだ…ただのTVのCMか…


自販機の奥に、貫禄があるというかなんていうか古びた雰囲気が印象的な玩具屋さんがあった。俺が近づいたから扉が開き、店の中の音が漏れたのだろう。


俺は興味をそそられ、店の中に入っていった。


壁や棚にびっしりとポップな商品が並んでいる。自分の中の子供心がとても擽られた。


知らない世界の、知らない場所なのになにとなく懐かしい。レジの近くには日めくりカレンダーらしきものがあり、今日は、リリル12の12ー27のようだった。へぇ!年月日みたいだな。


時計もカレンダー同様普通に読めそうであった。1周に15まで数字が振られているから、1日は30時間なのだろうか?…今は丁度9時45分かな?

時計の短針も長針も9を指していた。


違う世界なのに同じような文明があって俺は嬉しくなる。わくわくしながら他にも探してみることにした。




「ッ…!!!」


思わず目がいき、自然にその展示品に手が伸びる。青と白のクソダセェコスチュームに身を包んではいるが俺の知ってるキャラクターに顔がとても似ていた。


(懐かしい…子供の頃食い入るように観てたなぁ…俺、コイツの瞬間移動能力にすげぇ憧れてたんだよ…)


ふと思い紙を取り出す。この紙が本物かどうか確めたかったこともあり自然と手が動く。某キャラクターに似てる展示品の近くにあった商品名を注視して書く。


「おまえ…スカイジャンパーって言うのかよクソダセェ名前だな」


さっきCMをやっていたこともあり、なんかコイツに運命を感じた。


A(スカイジャンパーのミニミニフィギュア)× B(自由)= C(瞬間移動)


・・・・・・・何も起きなかった。

この静かなおもちゃ空間に、つけっぱなしのTVだけが音を発している。

ドッキリかこの世界自体が俺の幻覚か、それか女神に騙されただけなのかもしれない。


「はぁ……」


「君も楽しい空の旅へ!スカイパーク!!!」


ため息吐いた俺を慰めるかの様なCMが流れる…。

いいな…遊園地。行ってみたい。不自由のない身体になったのだから好きなだけ自由に遊びたい。観覧車もジェットコースターも乗りたい。


商品を手に取り微笑む。


「遊園地までできてるなんてお前…この世界では相当ゆうm__」


軽快なミュージックと滑車の動き出すガコンと言う音、ゴォっと風を切る音やキャーという楽しそうな悲鳴。


眩しくて、夢ではないかと確認するために瞬きを何度か繰り返す。

目を擦ったり、頬も引っ張る……夢ではない。俺は遊園地にいた。


先ほどCMで見たコースターが俺のすぐ目の前を駆け抜けて行った。

首が直角に曲がるほど見上げても全貌が掴めないほど大きくてたじろぐ。数歩後ろに下がる。


「…っと。すみません!」


「いえ。お客様、こちらこそ申し訳ございません。お怪我はございませんか?…………もしよろしければ、アトラクション入り口まで案内致しましょうか?」


「えっ。あ…その。。。だ、大丈夫です!!!えっと……売店はどこですか!?」


__________


よかった。戻って来れた。先ほどのおもちゃ屋に!

売店で買ったスカイジャンパーのミニミニフィギュアは消えていた。遊園地に飛んだ時も手に持ってたフィギュアは消えていたから消耗素材として消費されたのだろうか?


一応、女神から貰った紙を見る。

C欄に小さく”任意の場所に移動できる”と書いてあった。


やっぱり、この紙の力で移動できた感じか…

てことは残りの3枠もこんな感じで好きな力を得ることができるってことだよな!?

なんて使い勝手の良い力じゃないか!!


ん…?待てよ???Aの消費素材を全て統一して書けば俺、世界を牛耳れるんじゃね?

俺だけXXみたいなチート主人公待ったなしじゃないか!

そうと決まればこのフィギュアを買い占めなければ!!


それと並行して、この紙のことをなんか知っていそうなあのクソガキを見つけ出して、知ってることを全て吐かせてボコしてペンを返す……と。いいね。最高だ!!!目標が決まったぞ!


ふっははっ。これからの未来が楽しみだ!!!




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