第3話 「貴方が悪いのです!あなたが産まれてこなければ!貴方さえいなければッッッ!」

敵は思ったより盛大に暴れていたようで、すぐ見つかりました。ウミガラスは顔の所々にかすり傷を負い、服裾の一部が剥がれていたり、あまり芳しくない状況でした。


私は大きく深呼吸をして、脳に酸素を送り込みました。・・・ここからの私は「アニマルガール」ではありません。私もまた血に飢えた獣になるのです。


「日頃のストレスを・・・晴らさせてもらうのです!」


私はサンドスターの放出を止め、下から吹き付ける風で頬を切らしました。やつはもう私に仇した敵。言うなれば獲物なのです。


急降下の勢いでビーストの脳天に全体重を載せた蹴りが決まりました。


「シマフクロウッ!!!」


「遅くなって済まないのです。後は私がやるので、探検隊を・・・」

「りょーかい!まかしとき!」


ビーストは先程のはあまり効いていないようで、首を回しながらこちらを睨んでいます。


「来るなら来るのです。パークの塵芥」


私が喋っている途中で敵は仕掛けてきました。私はサンドスターを敵に向けて放出し、突風を発生させました。


敵は突風などものとせず突撃してきましたが、しかし超えた先で慌てて周囲を見渡し始めました。


当然です。そこに私はいないのですから。


私は敵の後方に飛び、静かに処刑用の刀を抜きました。これで一刺しすれば、やつは死ぬのです。


私の羽を持ってすれば、相手に気づかれることなく、容易に後ろから刺せるのです。



・・・


私は急に震えが止まらなくなりました。頭の中では、以前の殺す一歩手前で「フレンズ」として悲鳴を上げた彼女のことが思い返されました。


違う!彼女はただ、特別だっただけで・・・こいつは・・・


でも、もし、私が刺した途端にまた「フレンズ」に戻ったら・・・。


おかしい。私は今は獲物を狩る獣のハズなのですが。


気づけば、私は羽音を立てて飛んでいてしまっていました。



私に向かって飛んでくる敵を躱すことは叶わず、私は地面に組み伏せられました。


殺されるくらいなら!殺すのです!


私はありったけの力で翼をはためかせました。風は落ち葉や砂を巻き上げて、煙幕の様に二人を覆いました。


隙をついて脱し、低い姿勢のビーストを蹴り倒すと、私はそいつの上にまたがりました。


「貴方が悪いのです!あなたが産まれてこなければ!貴方さえいなければッッッ!」


私は処刑用の刀を掲げました。これで終わりッ・・・


ッ・・・振り下ろせないッ。なんでなのですか!?この私が!


敵は消耗してしまったようで、私の抑えを振り切る体力はもう残っていません。私が一思いにやれば、もう終わりなのです。


「どうしてっ!?どうして・・・動いてくれないのです!」







「え!?何やってるの?」



その声は、ウミガラスのものではありませんでした。飼い主のものでもない。



私は振り返りました。特徴的な緑がかった茶色の制服。・・・探検隊・・・



「うわ゛わ゛わ゛あ゛あ゛」


私は刀を喉元に突き刺しました。一度入れるとついに全身から力が抜けたのがわかりました。


「うわ゛わ゛わ゛あ゛あ゛」


私は刀を何度も突き刺しました。首は次第にボロキレの雑巾みたいにちぢれて、刀は重くなっていきました。


それでも、私は刀を振り下ろすのがやめられませんでした。


瞳の奥、まだ理性が残ってる景色では、探検隊の子が口から吐瀉物を吐いてるのが見えました。


もう自分でも何がしたいのかわかりません。あああああああああああ



結局、首と胴が離れるまで、私は刀を振り下ろし続けました。








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