Apexのその先へ

日曜劇場作るため脚本中

プロローグ

2029年、東京、足立区。

深夜1時。 とある青年があるところに電話した。そこは、蛍光灯が半分しか付いていない、1人の残業者のいるところだった。


「はい、退職代行サービス、ロストワークスです。今日はどのようなご用件ですか。」


電話したのは、佐藤隆一、24歳。上司からモラハラ、パワハラ、過労死するほどの労働をされていた。

「会社を辞めたいんです。」

「わかりました。どこの会社か教えてください。」

「株式会社ペンタブラックです」

「なるほど。安心してください。あなたはもう大丈夫ですよ。」

佐藤は泣き崩れた。やっと、解放されるのだ。ただし、そんな退職代行サービスが、日本のフォーミュラ界を変えるとは思ってもいなかった。


東京、目黒区。

ロストワークス社員、三浦隆弘は、会議室でプレゼンをしていた。題名は、「これからについて」。

三浦はプレゼンを始めた。

「我々ロストワークスは、ブラック企業問題の影響で、昨年の10倍の資金を受けました。」

経理担当の田中雄三はこういった。

「10倍...確かに増えましたけどねぇ...」

「これからどうするか、会議いたします。1つ目の選択肢は、新入社員の増加です。我々ロストワークスは、今のところ私を含めて、社員は20人ほどしかいません。なので、私が1番お勧めするのはこちらです。2つ目は、蛍光灯のLED化です。2年前の2027年、蛍光灯が、製造禁止になりました。これは単なる宣伝かもしれませんが、アイリスオーヤマさんが蛍光灯LED化してしてもらえるそうです。ただしこれはアイリスオーヤマさんとの契約が必要になるのであまりお勧めしません。3つ目は、給料の増加です。我々の給料は、約13,000円。これじゃ家賃も払えません。ただし、これは単なる私たちの要望であり、社長にはあまり意味のないことです。なので1番お勧めしません。」

「じゃあ新入社員増やす方が1番いいんじゃないか?」

三浦の同僚、清水洋介はそういう。

「社長、どうしますか?」

人事の佐伯次郎はそう訊く。

すると、社長の久我義弘は急に立ち上がり、こういった。

「我々は、スーパーフォーミュラに参戦する。」

「...はあ!?」

「社長、正気ですか!?」

「マシンで何円かかると思ってるんですか!?」

「もしマシンとエンジンは買えても、ドライバーがいないじゃないですか!」

ヤジが飛ぶ。

すると、佐伯が

「やりましょう。」

「佐伯さん!?」

「精神科行きますか!?」

「別にいいだろう。退職代行は人の願いを代行する仕事。社員の願いを代行してもいいんじゃないかな。」

「うっ…」

「それは確かに…」

Jアラートのようにうるさかったヤジがピタリとやんだ。

「決まりだな。我々はスーパーフォーミュラに参戦する。」



数日後。

そんなロストワークスのガレージに、とある青年がやってきた。名前を、林勝人という。

「これが俺の新しいガレージか。正直言って、設備はぼろい。でも、挑戦する気持ちは本物だな。」

「林君、ようこそ、ロストワークスへ。」

久我社長が歓迎する。そして林は、lost worksGPのファーストドライバーになった。しかし、久我社長は微笑んではいたが、内心、あまり喜べなかった。

「ファーストドライバーは用意できた。後はセカンドドライバーだが…」

「社長、もういいでしょう。お金がかかるだけです。それにほとんどのドライバーは他のカテゴリや他のチームに参戦してしまっています。」

しかし、佐伯は

「1人ではダメだ。もし、林くんのエンジンが出火して、ストップしたらどうなる。1人だとそのままノーポイントに終わる。しかし2人だと、もう1台がきっと、ポイント獲得するかもしれないからだ。それに、林くんだけじゃ心細いだろ。」

「そう…ですね…」

これにも、社員は絶句。

そうして久我は、セカンドドライバーについて1週間、会議をした。

しかし、決まらず、途方に暮れていた日曜日。目覚ましテレビを見ていたF1ファンの社員、三浦はこれを見てコーヒーを吹き出した。

「速報が入ってきました。日本人初のF1、チャンピオン、そして去年の世界王者、中里優希さんが『引退する』と言う情報が入ってきました。中里さんはレーサーそのものは辞職せず、『来年度から、スーパーフォーミュラに参戦する』と言う供述をしていました。繰り返します。中里優希さんが…」

「えっ゛!?世界王者がスーパーフォーミュラに!?」

「まさかうちのチームに…って何妄想してんだよバカ…」

そうこうしているうちに、久我に1通の電話が届いた。iPhoneに書かれている文字は、「中里優希。」久我は緑のボタンを押して耳に傾けた。

「退職代行サービス、ロストワークスです。何かご用件でしょうか。」

「久我さん、どうも。中里です。」

やはり、その電話の声は、中里優希なのであった。三浦が夢中で聞いていると、

「ロストワークスで走ってもいいですか。」

そんな中里の声が聞こえた。久我は、

「もちろん、大歓迎だよ。」

と、つぶやいた。これにより、ファーストドライバーに続き、セカンドドライバー、中里優希が誕生した。(余談なのだが、ファーストドライバーを中里にしてもいいんじゃないか?)



開幕3週間前。

ロストワークスは、緊急で記者会見を始めた。そこには、朝日新聞など、数百人の記者が固唾を飲んで待っていた。

「皆さんお集まりいただきありがとうございます。我々退職代行サービス・ロストワークスは、2029年度のスーパーフォーミュラに参戦することが決定しました。ドライバーは、カーナンバー66号車に、林勝人。カーナンバー67号車に、中里優希。」

もちろん、これには、たくさんの質問が待っていた。しかし2人は、いつもこの言葉を使った。

「俺たちは、挑戦者だ。」

この「挑戦者」という言葉が、会社を乗せて、羽ばたいて行くのであった。



次回予告

ついに始まった鈴鹿テスト。

2人は慣れている鈴鹿をどのように走るのか?

そして、開幕する2029年シーズン。

チャンピオンへ、1歩進めるか?

次回「鈴鹿」

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