4.4 襲い来る恐怖
『――以上が、スラグ・テクノロジーズ社ヘヴンズコール工場の業務および、
翌日の夜、ソリ
やがて肩と唇を震わせ、目を血走らせて、皆が叫ぶのは、スラグ・テクノロジーズ潰すべしの大合唱。
「野郎、とんでもないものを子どもたちにプレゼントしようとしていやがった。許せねえ!」
「子どもの敵、ネコちゃんの敵は死すべし!」
「おうよ! 子どもとネコちゃんの敵は滅すべし!」
こう憤慨するに至った、ソリ
スラグ・テクノロジーズ社は、主に産業用機械を製造する会社で、ヘヴンズコール工場の業務も、産業用機械のメンテナンスという、至極まっとうなものだった。
だが、問題はここからだ。
ソリ
解析により、彼らはアンドロイドであることが判明したのだ。
ヘヴンズコールでは、公道でのアンドロイドの使用を、原則として認めていない。単純に寒くて立ち往生する個体が多かったためだ。
だが、ヘヴンズコールの法律に違反していたところで、子どもや猫の敵とは認定されないだろう。
問題は、そのアンドロイドの使用方法にあった。
工場から出たばかりの仮称サンタロボの袋は薄っぺらい。中にほとんど何も入っていないことが、強く推測される状態である。
しかし、工場に戻るサンタロボの袋には膨らみがあった。ならば、袋に何かを入れたのだ。
一体何を、と皆が疑問に思ったところで、ホログラムに表示されたのは、サンタロボが野良猫を捕獲し、袋に入れている監視カメラの映像だった。
サンタロボは、一般人に宣伝したところで効果がないであろう産業用機械のビラを配り、裏では野良猫を捕まえていたということだ。
何のために捕まえていたのか、真相は分からない。
けれど、立て続けに起こったボヤ騒ぎや異臭騒ぎ、そして子どものいる家庭に送りつけられた予告状から、想像することはできる。
それこそ、誰にでも。
「野郎ども、すぐにかちこむぞ! 狙うはスラグ・テクノロジーズの首だ!」
「おう!」
そうしてソリ
町も寝静まる真夜中。
目標の工場にも人の気配はない。
大きなかまぼこ形の屋根に、搬入口の大きなシャッターと通用口の小さなドア。
まずは、トナ五郎が通用口を解錠にかかるが、しばらくすると首を横に振って、ロクに助けを求めた。
「物理部分の鍵は開けられたが、電子ロックとセキュリティを外せなかった。ロク、頼むぜ」
「オーケー、任せろ」
かつてトナ五郎とロクは、エイトオーが壊滅させた犯罪組織で働かされていた。
そのときに仕込まれた犯罪の技術が、今はこうして己の信じる正義のために役立っているのだから、人生とは何があるか分からない。
「「開いた」」
トナ五郎とロクの報告を受ければ、徐々にシャッターが上がっていく最中にも、ぼけっとしている者はなく、行動は迅速である。
トナカイたちは、ファンシーなトナカイヘッド型高機能ヘルメット・通称〝カブリモノ〟を頭からすっぽりかぶり、さらにトナ三郎とトナ四郎は、警官隊が持つような大きな
それを見届けたエイトオーが檄を飛ばす。
「シャッターが
「おう!」
非道な行いをしているであろうスラグ・テクノロジーズに天誅を下せるのだ。トナカイたちの士気は高く、すべてがうまくいくと、この場にいる誰もが思っていた。
だが、突入しようと、シャッターの奥を覗き込んだ二人が叫ぶ。
「臨戦態勢のサンタロボを多数確認!」
「なんだと!? ソリ
不測の事態であろうとも、さすが訓練されたエイトオーとトナカイは違う。
転ぶこともなく、素早くソリ
「すぐに突撃モードに移行。火器もありったけ出せ。シャッターが十分上がり次第、目の前のサンタロボどもを
『了解しました』
「お前ら、作戦変更だ! 偽者どもに鉛玉と火薬をたらふくご馳走してやれ!」
「「おう!」」
モーター音がして、ソリ
シャッターがゆっくりと上がり、サンタロボの姿が徐々に明らかになる。
定番のサンタ衣装に、人間そっくりの風貌。無数の赤く光る目が、こちらを見据えている。
一体のサンタロボがシャッターをくぐり始めたのをきっかけに、洪水のようにサンタロボが溢れ出てきた。
――そして、トナ太郎のマシンガンが火を噴いた。
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