第7話

にぱっ。


もう。


顔を上げて、「平気だよ?」という表情をした。


彼の指が、私の眼の端に触れる。


零れていた涙に、なんの感情も抱けない。


事実だったことの記憶が、時を経て、私のなかで風化して。


あまっちょろい解釈のもと、都合よく、溶けてきた。


変質して。


それは、もう、いいことかどうかというよりも、そうするより仕方がなかった、ということだろうと思う。


いいようにいいように、じぶんが生きやすいように意味合いをアレンジし続けてきたのだった。


そうして、いま。


現在の、私。


ああ・・・・・・。


泣いたって何したって、戻らない。時の流れ。

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