第5話

そんなこと思ってたら。


ああ・・・・・・。


彼に、くっつきながら眼を伏せて。


不意に、思い出したんだ。記憶のなかの私のことを。


ん・・・・・・。


ときどきは、覚えていて、こうやって不意に思い出す。


ザンザン雨の降っていた、誰も居ない河川敷。


地面は泥で、ぬかるんで、足を運ぶ場所を選んで、た。


川はゴウゴウ水嵩を増していた、ね?


危ないよ。そんな時そんな所を歩いてちゃ駄目。


でも。


そんなことも気にしないほど、ぬかるみのなかに居たね。


物心ついた、どの頃の私を見ても。


ぜんぜん良い子じゃなかったよ・・・・・・。


とてもじゃないけど、お天道さまに顔向けできない。


だからこそ、あんな凄い雨のなか、平気だったんだろうなぁ。


・・・・・・って。


俯いて、顔を、彼の胸元に押し付ける。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る