【BL】異世界で男娼になりました
しずる凛
異世界で男娼になりました
目を開けると、そこは一面灰色の世界。
「あっ」
「レイ、起きたんだね」
レイ??
「うなされてたよ、大丈夫?」
何だろう、その名前は。
俺は...
「疲れてたんだね」
「でもしっかりしないと。...もうすぐヒエロ様がいらっしゃるから」
ヒエロ様。その名前には聞き覚えがある。
この娼館の、お得意様である。
思い出した。
今の俺は、男娼。
目の前にいるヤツは、男娼の先輩のリンハだ。
俺は1ヶ月ほど前に、この世界に飛ばされてきた。
所謂転生者だ。
さぞかしワハハな異世界ライフ...を想像されるかもしれないが、一点読者の皆様の想定外がある。
この世界、男しかいないのである。
誰にも生殖能力は備わっていないため、人工的に子供を作り出している。
実際に作り出されている現場を見たことはないのだが、そうらしいとリンハから聞いた。
子供の作り方はこの国最高階級、王族しか知らない国家秘密であるという。
彼らは子供をポンポンと作り、いくつかのグループにして各階級に割り振る。
血の繋がりはないけれど、このグループが「家族」という共同体になり、生活をともにするそうである。
階級は絶対であり、生まれた時から運命が定められている。
リンハは1番下である。そして異世界から流れ着いた俺も、勿論その階級に位置する。
1番下の俺らにできる仕事は一つだけ。
他層の人々の性欲を処理する仕事である。
そう、この世界、生殖能力がないのに不思議なことに、性欲だけは残っているのだ。
男しかいなくても、だ。
その需要にお応えする「娼館」が、ここなのである。
リンハはこの娼館に生まれ、物心つくと同時に客をとっていたそうだ。
後輩ができたことが嬉しいのか、嬉々として俺に色々と教えてくれた。
のろのろと、シャワーに向かう。
今日の仕事は、4件。
売れっ子のリンハは10件くらい入っているそうだ。ご苦労なこと。
ヒエロ様がやってきた。この男、何故か俺を気に入っている。
「レイ君」
「仕事は慣れた?」
「ええ。...ヒエロ様のお陰ですよ。何から何まで指導して頂いて」
「ふふ。何から何までね。君の初めてをいただくことができて光栄だったよ。あの頃は耳まで真っ赤にしていたのに、すっかり余裕のようじゃないか」
「...始まったらわかりませんよ」
「そうだな」
彼の指が、俺の腰をなぜる。
つづいて胸、首...彼は俺を撫ぜるのが好きだ。
俺は感じている振りをする。
◇◇◇
「ありがとうございました」
「ああ...また、来るよ」
先程の痴態が嘘のように、紳士的になったヒエロは、何故か気まずそうにいそいそと帰っていく。
(いっそ堂々としていたらいいのに、不思議なものだな)
その時、受付からがしゃん、と大きな音が聞こえた。
「俺を裏切りやがって!」
(なんだ?!)
客を迎え入れる玄関口、大広間に出る。そこでは恰幅の良い客が、怒りでわなわなと身を震わせていた。
一方、部屋の隅で倒れているのは...
(リンハ!!)
「俺の恋人になると言ったんだ!幾らかけたと思う、嘘をつきやがって、出てきやがれ」
「シャクシー様、どうか落ちついて」
年老いた従業員頭の言葉が、虚しく中を舞う。
シャクシー様。名前だけは知っていた。リンハの太客だ。
リンハは客の悪口を言わないけれど、彼に会った後のリンハはいつも痣を作っていた。
「可哀想に」
「いや、リンハが悪いんだよ。正規の料金とは別に、金銭を受け取っていたそうじゃないか」
「でも、リンハはなあ...」
ひそひそと従業員が話している。
「...リンハ」
彼らの言っている通り、正規料金外で金銭を受け取ることは大罪である。
しかしそもそも俺たちには、金は貰えない。
衣食住を保証される代わりに、ひたすら股を開くだけ。人気が出れば多少待遇が豪華になることはあるが、あくまでお上の気持ち次第。俺たちが自由に使える金など、一銭も無いのだ。
(...もしかして)
聞いたことがある。
リンハの恋人の話。
一時期ここを訪れていた退役軍人で、リンハと恋仲になったという。
しかし従軍中の怪我が原因で、今はここを訪れられないどころか、部屋から一歩も出られない有様なのだとか。
(...そういうことか。)
リンハは、彼の治療費を稼ごうとしたのだ。
シャクシーはますます荒ぶり、今にもリンハを殺しそうな勢いである。
ガチャ。
そんな時、荒々しく開けられたドア。
そこに立っていたのは、2mにもなろうかという巨漢の男だった。
冷たい瞳に、銀色の長い髪をたなびかせている。
「クレバー様!!!」
途端に皆が道を開ける。腕にあるあの腕章は...リンハが言っていた、この国の最上位。
王族の腕章だ。
と、その男と目が合った。
吸い込まれそうに冷たい瞳ーー
俺はこの日の出会いを、何度も何度も、後悔することになる。
【BL】異世界で男娼になりました しずる凛 @rin_ssssss
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