第4話 ええい、ままよっ・・・

俺は最後の賭けに出た。

お前を操ってタブレットに曲をリクエストさせた。


選んだ曲は。

「あの素晴らしい愛をもう一度」。


お前の親父の十八番(おはこ)だ。

幼い頃から何千回、聞かされただろうか。

俺も辟易していたもんな。(笑)


お前の親父は酔っぱらうと歌う。

奥さんも苦笑いを浮かべながら聞いていた。

それでも、何となくお前も嬉しそうだった気がする。


酔っぱらってはいたけど。

親父の歌唱力はそこそこで。

お前だって、音楽の成績は良かった筈だ。


生来の引っ込み思案の性格で。

人前では歌わなかったけど。

お前の親父以上に歌は上手い筈さ。


「えっ・・・?」

突然始まったテロップにお前は狼狽えたけど。


幼い頃から。

何千回も聞かされた曲だったから。

自然とマイクに声を響かせたのだった。


見せたかったなぁ・・・。

聞かせたかったなぁ・・・。

読者の皆様に。


あんぐりと開いたクソ上司の顔を。(笑)

バーカウンターの客全員が聞き惚れていた。


そう。

あの子も。

潤んだ瞳で。

お前を見ていたんだ。


ヤッホォッ・・・!

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