見えない皿2

 さて、歩きながら今回の依頼を整理しよう。

 依頼者はちっこい1年生の小久保

 困りごとはストーカー被害とそれに追随する悪夢。

 条件がかなり緩い

 俺は今回の調査で外に出るきはない

 だって実害は出ていないのだから。

 ちっこい一年女子と津田が納得できる道筋と結論を作り出せばいい。

 それがあっていてもあっていなくてもいいのだ。

 今回はそれが大作ミステリー風であれば尚いい。


 納得できれば心は落ち着く、落ち着けば、怪奇現象なんて観測しなくなる。

 まずはそのために一年女子のことを調べる。

 心の病を取り除いてやるために



 まずは……一年の協力者を尋ねよう

 俺にはこれと言って下の学年とつながりはない。

 だが一人だけ俺に入学早々告白してきたバカが居る。

 なんだかんだ、そいつは優秀だ。

 下級生の教室のドアをたたくのは少し緊張する

 

「因幡ー、いるか?ちょっと聞きたいことがあるんだけど!」

「お!先輩じゃないすか!儚げ妹後輩系彼女になにか御用ですか?」

「お前の告白はしっかり断った、だから彼女じゃない、あと儚げではない。やかましい系の間違いだろ」

「ごちゃごちゃうるさいですね、その唇塞ぎましょうか?」

「よく人前でそんな言葉が出せるな。みんな見てるぞ。」

「別に私は勘違いされて困ることはないので、逆に既成事実を作れるので好都合と言うか」

「じゃあ俺が困るやめてくれ、そしてこんな会話をしに来たわけじゃないんだ」

「今回も、女の子の情報が欲しいんですか?お盛んですねぇ先輩」

「そういうわけではないのだが、女の子の情報が欲しいのは事実だ。」

「まぁそうだと思いましたよ。先輩が私を尋ねるときは大体そうですからねぇ。最終的に私のもとに戻ってくれば

 許しますから、存分に遊んできてください」

「正妻の余裕みたいなの出さなくていい、正妻にしたことはない」

「で、今回は誰狙ってるんですか?」

「人聞きが悪いな……今回は確か小久保といっていたかな?」

「小久保ちゃんですか……ちょっと屋上行きましょう」


 腕を引っ張られる、かなり強い力で。

 こいつ、やっぱり強いな……全く抵抗してないとはいえ、軽々と俺を屋上扉まで運んでしまった。


「どうしたんだよ、急に、聞かれたらまずいことでもあるのか?」

「大有りですよ先輩。最低限一年生の階でその名前を出さないほうがいいです。」

「なんで?」

「小久保にとりちゃんっていうんですけど‥‥いじめられてるといいますか……あんまり評判が良くないんです。あの子とつきあうと呪われるみたいな噂とかが広まっちゃてて、私も止めようとしたんですけど……検討虚しく」

「そうか…そうか、愛する後輩がそれに加担してなくて安心だ、それはそうと

 それがなんでかはわかるか?」

「多分親です。小久保ちゃんの宗教二世なんです。言っちゃまずいかもですけど、家庭環境も良くないみたいで。これも噂なんですけど…夜遊びしてるみたいな……たくさん噂はあるんですけど」

「だいぶだな、それで、学校でもいじめられてしまうのか。」

「小久保ちゃん本人は優しくて、おとなしい文学少女って感じなんですけど」

「小久保は何を読むんだ?」

「詳しくはわかりませんけど、芥川龍之介をよく読んでますね」




 やっぱり持つべきものは優秀な後輩だ。

 ほしかった情報が全部手に入った。

 すべての情報を簡単に関連付けられる。


「わかった、ありがとう、今回の報酬はデート一回でいいか?」

「だめです!デート3回です。そして、私は先輩にキスを所望します」

「それはダメだな、もう少し女を磨いて告白してきてくれ。デートは許そう」

「そうですか……先輩はガードが硬いですねぇ、先輩を狙ってる人は多いですから気をつけてくださいね!」

「わかったわかった、じゃあな、また聞きに来るからよろしくな」


 やはり、因幡しろは、優秀な後輩だ。

 何より可愛い、そして俺の本性を知っても尚慕ってくれている。

 だけど、俺には身体的接触は刺激が強い。だから許していない。

 さて、ほしかった情報が一発で手に入った。俺の課題はこれをどう構築して納得させるか。

 一度部室に戻って、考えをまとめよう。

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