怪奇事件調査部の非日常
紺乃緋霞
1.怪奇事件調査同好会(1/6)
京都の京条高校。
放課後の渡り廊下に、少し気の抜けた声が響いた。
「すんません」
「はい?」
伊達メガネをかけた男子生徒が女子生徒二人組に後ろから声をかけた。
ポーズをとって、メガネは日の光に反射して光っている。
「よかったらこれ、受け取ってくれへん?」
「はぁ...?」
無駄にカッコつけて男子生徒が渡したのは“怪奇事件調査同好会”の勧誘のビラだった。
女子生徒達はそれを男子生徒に返す。
「ごめんなさい、うちらもう部活入ってるんで」
「そうやったん?こっちこそごめんなぁ。ところで、よかったら連絡先交換せぇへん?」
「ごめんなさい」
女子生徒たちは返事もそこそこに自分たちの部活へ急ぐ。
男子生徒は照れ笑いを浮かべ、伊達メガネを外した。
「照れさせてもうたんかなぁ」
「そんなわけないでしょう、倉橋部長。引いてましたよ、あれ」
「天ヶ瀬」
男子生徒、倉橋明良の後ろからツッコミ。大和なでしこが似合う藍色のショート髪の女子生徒、天ヶ瀬朧だ。
天ヶ瀬は呆れたように言う。
「ていうかそのメガネ伊達ですよね。いちいち外すの面倒じゃないですか?」
倉橋は「フッ」と笑う。
「かっこええ男は、メガネしとかへんかったらモテすぎてまうやろ?」
「モテないの自覚したくないからですよね」
「うるさい」
こんな会話はいつものことである。
怪奇事件調査同好会を設立してから約2ヶ月。何もすることがなく、天ヶ瀬の仕事は倉橋のツッコミをするくらいしかない。
天ヶ瀬がビラを眺めて一言発する。
「......この部長の写真が無ければまだマシだったと思うんですけど...」
「あかん。イケメンの写真載せとかんと女の子来てくれへんやん」
「加工しすぎてもはや別人ですよ。てか人ですか?」
ビラに載っている写真は顔が豆のように小さすぎてガタイのよすぎるひとになっていた。
そして眉毛が濃ゆい。
いつの時代のイケメンを参考にしているのやら。
「というか今更部活勧誘って...もう6月で...って、ん?」
天ヶ瀬が呆れていると視界の端に動くものが見えた。
廊下のざわめきが、ふっと遠のいた気がした
「どうかしたん?」
天ヶ瀬は壁をじっと見ている。
すると、天ヶ瀬の影が、夕日と逆方向へグニャリとズレたように見えた。
「え?!今動いたで?!」
天ヶ瀬自身は微動だにしていない。
倉橋が声をあげると、影は元に戻ったように見えたが、壁にわずかに残る歪みが、不気味に揺れていた。
「なんやったん...?今の...?」
天ヶ瀬はしばらく黙って、壁の歪みをじっと見つめた。
目に映った影の異様さを、頭の中で整理しているようだった。
「...実は私影を操る妖怪なんですよね」
「え?!妖怪?!」
「今まで黙っててすみません...」
「そんな...天ヶ瀬が妖怪...? 」
あんぐりと口を開ける倉橋に「予想通り」と顔を綻ばせる天ヶ瀬。
――――――――――――――――――――――――
あとがき
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