肉は斬らせないが骨は断つ
しかし悠長なことも言ってられない。
今にも旅人達はやられてしまいそうだった。
とにかく走った。
走って野盗に近づき、剣を………
抜かずに普通にぶん殴った。
殴られた野盗はキレイに吹っ飛んでいったが
死んではいない。
体が震えて、思うように力が入らなかった。
やっぱり駄目だ。
たとえ相手が悪党だったとしても
他者の命を奪う覚悟なんて全然できてなかった。
その後も、震える体をどうにかして動かし
野盗を退けるが、やはりうまく力が入らず
「なんなんだてめぇは!いきなり湧いて出てきやがって!邪魔すんじゃねぇ!」
「こいつ剣も抜かねぇつもりか?馬鹿にしやがって!」
「舐めんじゃねぇぞ!」
負けはしないと思う。
最初の頃なら、完全にビビっていたであろう
状況ではあるが、自分の体の変化を理解し
相手の力量を測れるようになった今なら
何ら恐れることはない。
ただ、奪うことができない。
こんな切羽詰まった状況だからだろうか?
現実逃避をしたくなるのは…。
殺さずを誓い、貫き通した某大人気漫画の主人公。
赤髪で頬に十字傷の流浪人さんは
実に凄いことをやって退けたんだなぁ…などと。
そこまで考えてハッとする。
これだ!
腰に下げられた剣に、破壊の力を使い刃を潰した。
それから…えーっと
ビビってたって思われないような
それっぽいセリフを……
「いいよ。じゃ、本気で相手してあげる。後悔しても知らないからね」
そう言って、スラリと抜剣し
切っ先を野盗に向けた。
しかし奴等は、私の声を聞いた途端に
下卑た笑いを向けてきた。
「なんだ…お前、女か。こりゃあいい!」
野盗共はニタニタと気持ちの悪い笑みを浮かべ
私ににじり寄ってきた。
フードを深く被っていたから
顔を見て判断できなかったみたいだけど
女だと分かった途端、舐めてくるとか
こいつらバカなんだろうか?
バカなんだろうな。
さっきまで、素手の私にボコられていたという
記憶は消えてしまったみたいだ。
とにかく刃を潰したとはいえ
剣が鋼の棒になっただけで
凶器であることに変わりはない。
私が振り回すのだから尚更だ。
なるべく力を入れずに、加減して…
武器を持っている分、ジャイルにしたビンタより
弱くても大丈夫。
よし、イケる!
「なーに、そんなにビビるなって。ちゃんと可愛がってやるからよ!」
剣を振り上げ、斬り掛かってきた奴の懐に潜り込み
両手持ちした鋼の棒を、左切り上げに振り切る。
バキベキボキッ! 「ぎゃあああぁぁ!!」
汚い悲鳴と共に、骨が砕ける音が聞こえた。
アバラ5、6本。
よし、大丈夫。死んでない。
その後も野盗共の骨をへし折りまくり
茂みに隠れていた1人も
きっちり成敗して、討伐完了。
旅人さん2人に、大丈夫ですかと声を掛け
無事を確認すると、達成感を
ヴェールとヴィータの元に戻った。
しかし2人は、白い目で私を見てくる。
解せぬ。
「お前…やることがエグすぎんだろ。あれなら殺してやった方が楽だと思うぞ?」
「えぇー、そんなぁ。死ぬよりはマシだって」
「ああいうのなんて言うんだっけ?『肉を斬らせて骨を断つ』だったかしら?」
うーん…違うと思うよ?
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