神殺しの上昇:戦争の記録
@Cuka5500
第一章 『オリンポス侵攻』プロローグ「神殺しの誕生」
「人類の世界は準備ができていなかった。我々は星々に到達するためにロケットを建造したが、星々は我々を蔑む者たちの金床から放たれた火花に過ぎないことを知らなかった。」
記憶は寄生虫だ。死者を悩ませ、生者をゆっくりと蝕む。 目を閉じ、あの匂いを再び嗅ぐ。オゾン、アンブロシア、そして燃える人間の髪の毛の匂い。天が裂けた日は救済の日ではなかった。黄金の光に包まれた、屠殺場だった。
妹の顔が見える。彼女は笑いながら、太陽の光に顔を向けた。だが、次の瞬間、同じ光が彼女を焦げた彫像に変えてしまうとは、まだ知らない。アポロンは戦車に乗って通り過ぎた。狙いも定めていなかった。彼にとって私たちはただの塵であり、視界を遮っていた。
冷たい鋼鉄を手にしている。農耕用の鋤の残骸から鍛え抜かれた、私の最初の刃。黄金の守護者の肉をどれほどひどく切り裂いたか、今でも覚えている。私が初めて血を流させた不死者だ。そのプラズマは私の顔を焼き、癒すのに10年かかった傷跡を残した。
神々の笑い声。雷鳴のたびに、海の波のたびに、それは私を悩ませる。彼らはすべてを奪った。家も、家族も、名前も。彼らは灰だけを残したと思っていた。 彼らは間違っていた。彼らは武器を残したのだ。
目を開ける。周囲に広がる寺院の廃墟は現実のものだ。古血と生傷に覆われた両手は、寒さではなく、抑え込まれた怒りで震えている。体中の傷跡の一つ一つが、私の年代記に刻まれている。一つ一つの喪失は、私が彼らの王座へと昇り詰める一歩なのだ。
神は時が癒してくれると言う。嘘だ。鍛冶屋が刃を研ぐように、時間は私の怒りを研ぎ澄ますだけだ。
忘れない。許さない。そして、人類を攻撃すると決めたあの日、彼ら全員が罪を悔い改めるまで、私は止まらない。 神々は地球に戦争をもたらした。しかし、彼らはこの惑星が地獄でも生き延びることのできる生き物たちの故郷であることを忘れていた。 「それは世界の終わりではなかった。私の狩りの始まりだった。」
周囲の世界は消え去った。廃墟となった街も、空もなかった。ただ、墓地の冷たく古びた汗の匂いがする、濃く粘り気のある霧だけが残っていた。この灰色の虚空から、無数の目が私を見つめていた。死の苦しみに満ちた、私自身の目が。
「お前は取るに足らない存在だ」神の声が歯の間から響き、膝がガクガクと震えた。「お前はただの人間で、名もなき穴で朽ち果てる運命にある。なぜ避けられない運命に抗うのか?」
彼は巨人ではなかった。鋼鉄の鎧を身にまとった、痩せこけた青白い生き物だった。まるで、叫び声を上げる罪人たちの凍りついた顔でできた、生きているかのようだった。手に握られたギザギザの鎌が鈍く輝き、どろっとした黒い液体を滴らせていた。
剣を持ち上げようとしたが、腕は石のように重かった。恐怖――真の、原始的な恐怖――が筋肉を締め付け、一歩でも前に進めば永遠の苦しみに陥るだろうと告げていた。
神は微笑んだ。その顔は完全な傲慢さを装っていた。
「ほらねM?お前の体はもうお前を裏切っている」彼はゆっくりと私に向かって歩きながら、鎌を石の上を擦りながら言った。その音は私の耳から血を流した。「膝をつきなさい。神の手による死は、お前にふさわしくない慈悲だ」
目を閉じた。暗闇の中、私が見たのは彼の妄想ではなく、私自身の記憶だった。故郷の灰と、私が守り損ねた人々の冷たい屍。恐怖は残った。しかし、私はそれを燃料として使った。もし私がこの地獄で燃える運命にあるのなら、悪魔自身も一緒に燃やしてしまおう。
「あなたの恐怖」私は嗄れた声で言った。唇からは血の泡が流れていた。「永遠はひどい匂いがする。」
私は突進した。走るのではなく、傷ついた獣の突進だった。神が手を挙げた瞬間、純粋な恐怖の波が胸を駆け抜け、心臓が止まりそうになった。私は叫んだ――痛みからではなく、怒りから。神の神聖なる意志をかき消した。
私は距離を縮めるために三回ジャンプしたが、神が笑顔を恐怖のしかめっ面に変える間もなく、錆びた鎖で縛られた私の拳が彼の完璧な顔に激突した。
神の顎が砕けるような音が響き渡った。黒に近い、ほとんど黒に近い血が霧に飛び散り、幻影は割れた鏡のようにひび割れ始めた。
「お前…よくもそんなことができたな!」神は叫び声をあげ、後ろ向きに飛び去った。完璧な鼻は潰され、目からは涙の代わりに膿が流れ出た。
彼が正気を取り戻す前に、私は彼の喉を掴んだ。彼の肌は氷のように冷たかったが、私の指の下ではまるで死んだ人のようだった。
「あなたは恐怖の神なのですか?」脇腹に突き刺さった鎌を無視し、私は彼の顔を近づけた。 「ならば、よく見なさい。今日は神々自身が何を恐れているのかを知ることになるでしょう。」
その時、霧がようやく晴れ、寺院の廃墟が姿を現した。戦いはまだ始まったばかりだったが、私はすでにその終わりを予感していた。
恐怖の神は取るに足らない存在だった。オリンポスではほとんど目立たなかったが、ここ、人間の街の廃墟の中では、まるで巨人のように思えた。 彼の体は幽霊のような燐光を放ち、翼の断片が背後で羽ばたいた。彼は私を壁の破片に押し付け、大理石のように冷たい指が私の喉に食い込んだ。
「定命の者…」彼は息を詰まらせた。息からはオゾンと古い血の臭いが漂っていた。「天界人を傷つけられると思ったのか?お前は私のサンダルの下ではただの土くれだ。」
私は答えなかった。肺は焼けるように熱くなり、視界は暗くなっていたが、傲慢な彼が気づいていなかった何かを私は感じていた。彼の神聖な肉体が震えるのを感じた。彼は怯えていた。恐怖の神が自らの贈り物に窒息しかけていた。
私は彼の手首を掴んだ。油と血に染まった私の指は、彼の完璧な肌に比べて哀れに見えた。しかし、握りしめると、はっきりとした乾いた音が聞こえた。 神が叫び声を上げた。その音は荘厳ではなく、むしろ哀れなものだった。まるで、殴られた犬の叫び声のようだった。
「土?」老人の声で私は尋ねた。「そうかもしれないが、今日はこの土があなたの屍衣となるのだ」
渾身の力と怒りを込めて、私は一撃を加えた。完璧な一撃ではなかったが、憎しみに満ちていた。恐怖の神はよろめき、幽霊のような輝きが薄れていった。耐え難い痛みと恐怖が混じった表情――彼自身の才能が逆効果になったという表情――が彼の顔に浮かんだ。彼は私を押しのけようとしたが、手首を掴む力は失われていた。彼の神聖な力が、まるで砂のように指の間から滑り落ちていくのを感じた。その瞬間、彼は神ではなく、ただ震える生き物のように生にしがみついていた。彼の目を見つめたが、そこには彼自身の恐怖の影しかなかった。
フォボスは泥の中に横たわっていたが、そこには神聖なるものは何もなかった。ついさっきまで生きているように見えた彼の鎧は、今や歪んでおり、濃い黒い粘液で汚れていた。
恐怖の神は、砕けた寺院の石板に折れた爪をしがみつきながら這って逃げようとしたが、私はその背骨を踏みつけた。 重く湿った音がした。神は悲鳴を上げた――か細く、哀れに、怯えた子供のように。
「もうたくさんだ…」彼は自分の血にむせながら、かすれた声で言った。「お前は分かっていない…私の死…世界は狂気に溺れる…」
私は静かに彼の髪を掴み、無理やり頭を上げた。かつて完璧だった彼の顔は、砕け散った骨と恐怖でぐちゃぐちゃになっていた。本物の、人間の恐怖。何世紀にもわたって他人から飲み続けてきた恐怖を、ついに自ら味わうことになったのだ。
「構わない、世界は消えたのよ」私は灰のざわめきのような静かな声で言った。
私は彼のギザギザの鎌の折れた端を彼の肩に突き刺し、神を地面に押し付けた。フォボスは大声で叫び、壁の最後の漆喰が崩れ落ちた。しかし、私はまだ終わっていなかった。
私は鎖を彼の細い首に巻き付けた。彼の神聖な皮膚は私の手を焼き、人間の接触を拒んだが、私は拳を強く握りしめるだけだった。
「死んでも苦しみは終わらない、フォボス」私は彼の肩甲骨に膝を押し付けながら唸った。「この全ては私の手で苦しみを味わって償ってもらうことになるだろう」
私は引っ張り始めました。ゆっくりと、計画的に。
鎖が肉を切り裂き、血漿が沸騰し、刺激臭のする煙となって蒸発した。フォボスは痙攣的に地面に手を叩きつけ、指先で石を引っ掻き、深い皺を刻んだ。かつて人類の悪夢を映し出していた彼の目は、今や見開かれ、存在しない慈悲を乞うように。
最後の、耳をつんざくような衝撃とともに、抵抗は消えた。
私は恐怖の神の首のない死体の傍らに立ち、荒い息を吐いた。フォボスのプラズマが皮膚を貫き、私を焼き尽くし、私の本質そのものを変えた。遺跡を覆い尽くしていた恐怖の霧が傷口に染み込み、新たな暗黒の力が私の中の空虚を満たし始めた。
私は頭を上げて暗い空を見上げた。オリンポス山が雲に隠れていた。彼らはそれを見た。星の一つが消えたのを感じたのだ。
彼は血まみれの鎖を投げ捨て、最初の一歩を踏み出した。登りはまだ始まったばかりで、道の残りには神々の首が散らばっていることを悟った。
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