第14話 究極の選択

闇の騎士の言葉は、アリスの脳裏に激しい嵐を巻き起こした。勝利も敗北も、全てが次なる破壊のサイクルを生むための道具。彼が持つ「希望の光」でさえ、究極の存在を生み出すための「糧」にすぎないという冷酷な真理。

闇の騎士は、その言葉を締めくくり、アリスに選択を迫った。彼の剣の先に集まる闇のエネルギーは、今にも炸裂しそうなほどに凝縮されていた。


「これこそが、お前の試練だ、光の覇王よ」


闇の騎士は、世界の運命を賭けた最終的な問いを投げかける。


「どうする?遥かなる輪を断ち切って無意味にするか。至高存在を産み出すために進むか選ぶがよい」


この戦いで彼自身が闇の騎士を滅ぼさず、また自身も滅びずに、両者の存在を世界から隠蔽し、力を封じ込める。戦いを放棄し、運命を無効化することで、次のサイクルを回避する。しかし、それは現在の世界を蝕む闇の騎士の支配を許し、あるいは世界を停滞させることを意味する。


あるいは


闇の騎士との最終決戦に挑み、いずれかの破壊を通じてこのサイクルを完遂させる。これにより、究極の存在を生むという彼らの使命を果たす。しかし、それはアリスが愛する全ての世界の終わりを意味する。

アリスは深く息を吸い込んだ。彼は、賢者が命を賭して彼に与えた力、そして両親が彼を愛した記憶、全てを内省した。


(輪を断ち切っても、闇の騎士の破壊は止まらない。世界は緩やかに腐敗していくだけだ。そして、もし至高の存在が、この無限の悲劇の上に成り立つものだとしたら…それは真の救いではない!)


アリスは、闇の騎士の理論の核心――「破壊の上にしか、完全なる創造は成り立たない」という傲慢な前提を否定した。


「私は選ばない」アリスの声は、山の轟音にも負けない強い意志を持っていた。


アリスは光の剣を垂直に立て、胸の光の印を解放した。光は、闇の騎士が求めたような破壊のエネルギーではない。それは、無限の可能性と、世界の多様性を肯定する、生命の輝きだった。


「連鎖を断ち切るために、私自身を無に帰すこともしない。お前が望む究極の破壊の糧となることも拒否する。私は、希望の光で、この連鎖そのものを書き換える!」


アリスは悟った。光の覇王の真の使命は、闇の騎士を倒すことではない。闇の騎士の論理、「破壊と再生の無限の連鎖」そのものを、「光と生命の無限の継続」へと変えることだ。


「私の光は、終焉をもたらさない! 闇に飲まれることもない! 私は、お前と共に新しい連鎖を始める!」


アリスは、光の剣を闇の騎士へと向け、このプロローグを終えるための、最後の行動に出た。

アリスの剣から放たれた光は、闇の騎士の放つ終焉の闇と衝突した。


この光と闇の戦いは、世界の終わりを告げる物語のプロローグであったが、アリスの選択は、その運命の書を破り、「永遠の連鎖」ではなく「自由な未来」への物語へと、世界を導き始めた。

この激突の結果、世界が救われるのか、滅びるのか。それは、このプロローグの後に続く、アリス自身の戦いにかかっていた。

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光の覇王・闇の騎士 原田広 @hara893

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