ネクラマンサーの狂人死霊術〜最弱の死霊術師がダンジョン最下層で魔術書を拾ったら別世界の偉人ゾンビを召喚できる死者の書だった件〜
藤白ぺるか
第1話 ネクラマンサー
本作はカクヨムコンテスト11短編、カクヨムネクスト賞への応募作品です。
1万字以内の短編ですが、5話まであります。
ぜひとも応援よろしくお願いします。
―――――――――
「おい、ネクラマンサー!! さっさと次の骸骨を出せ! 遅えぞ!!」
怒号が飛ぶのは、とある高ランクダンジョンの二十九階層。
Aランクパーティーの一員として参加していた俺――ハイトは、歯を食いしばりながら骸骨を召喚し続けていた。
俺は現在十八歳。冒険者としては異例の若さでAランクパーティーに所属しているが、その立場は荷物持ちや雑用係に近い。
一族から受け継いだ死霊術――ネクロマンサーの力を持つため、俺は死霊術師として冒険者をしている。
ネクロマンサーとは、死体を召喚し操る死霊術師のことだ。
だが俺は、その中でも最下級。
内向的な性格も相まって、根暗とネクロマンサーを掛け合わせた「ネクラマンサー」などという不名誉な呼び名で呼ばれていた。
「しょ……召喚っ!!」
現れた一体の骸骨は、仲間の盾となる間もなく粉々に砕け散る。
目の前に立ちはだかるのはマジックサイクロプス。
ただデカいだけの下位種とは違い、魔法まで操る上位個体だ。そんな相手に、骸骨など正直ゴミ同然だった。
「はぁ……はぁ……もう……」
何百体と骸骨を呼び出し続け、俺の体力は限界を迎えていた。
魔力量だけには昔から自信があったが、召喚できるのは低ランクの骸骨のみ。
数だけは揃えられる。だが相手が強すぎれば、盾としての意味すら失う。
しかも召喚のたびに体力が削られていくため、意識は次第に霞んでいった。
「クソっ……もう少しでボス部屋だってのによ……この役立たずがっ!」
「ダメだ! 引き返すぞっ!!」
そんな声が聞こえ、俺は朦朧とした意識の中で必死に立ち上がろうとした。
出口へ向かって走ろうと――だが。
「お前はもう用済みだ。ここで寝てろ。俺たちが撤退するまでの時間稼ぎだ」
「えっ!? 置いていくなんて、そんな……!」
「そうよ! 私たち、ずっと一緒にやってきたじゃない!」
パーティーリーダーが、俺を切り捨てる決断を下す。
二人の女性メンバーが必死に庇ってくれたが――
「無理だ! もう間に合わねえ! 俺たちまで死ぬぞっ!」
「うっ……!」
「だめっ!!」
倒れていた俺は、リーダーに蹴り飛ばされた。
身体は床を転がり、気づけばマジックサイクロプスの目の前。
一瞬で、俺にヘイトが集まる。
「あっ……あっ……」
ここまで、か。
巨大な腕が振り上げられ、俺を叩き潰そうと迫ってくる。
「だめぇーっ!!!」
その瞬間、後方から火魔法が放たれた。
火球がマジックサイクロプスの腕に直撃し、わずかに軌道が逸れる。
――ドォォォォンッ!!
轟音とともに、腕が俺のすぐ横の地面に叩きつけられる。
ピシ、と不吉な音が足元から響いた。
次の瞬間、ガラガラと音を立てて地面が崩れ落ちる。
身体が宙に浮き、制御不能の浮遊感に襲われた。
「あぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜っ!?」
俺は、どこまでも続く暗闇――奈落の底へと落ちていった。
「ハイト〜〜っ!!」
最後に、女性の仲間が俺の名を叫ぶ声だけが、遠く遠く響いていた。
―――――――――
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