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アオバ ツボミ

第1話

―――5年前 太平洋にて一つの島が隆起した

 その島の名前を世界は『未来都市 ネオ・アーカディア』と名付けた








―――4年前 とある病院にて


「えー左腕と右目、あとアバラを4本でよろしかったでしょうか」

白衣を着た男が手元にある紙をペラペラとめくりながらそう尋ねる


「あぁ、問題ない。」

その言葉に肉付きの良い男が静かに同意した


「……大変ですね。位が上がるというものは」


白衣を着た男は小さく呟くと肉付きの良い男に静かに針を刺した









―――――未来都市 ネオ・アーカディアから得られた科学技術には今の私たちには想像できないものが数多にあった。

空飛ぶマントや瞬間移動装置もさることながら、まさにタイムマシンまで存在していた。まさにどこぞの青狸の世界であった


だが、過去への干渉を罪とする遠い未来ではネオ・アーカディアの存在は大罪になる。

しかし私たちはネオ・アーカディアの素晴らしい科学技術を手放したくない。


そのため『未来都市 ネオ・アーカディア』は戦場と化した









―――ヴヴヴヴッ

隅々まで除菌された真っ白な部屋で静かに骨を切断する音が響く


「——――アバラ3、切断完了。後はC班に任せます」

電動ノコギリを持った白衣の男がそう告げる


「了解です」

その言葉に別の男が切断されたアバラを手に取り黒い液体に浸す








―――人間の肉体の一部をネオ・アーカディアから密輸した謎の液体に溶かし1から2ヶ月ほど放置する

放置された謎の液体はまるで生物のように細胞分裂らしき行動を行い、人間らしい形に変化する









――手術から1ヶ月と17日後


「—――始めまして。」

軍服を着た可愛らしい女が、片目片腕の無い男に挨拶する


「……あぁ初めましてだな」

男が複雑な表情を女に向ける



しばらく二人の間で目線を逸らしたり合わせたりと気まずい静寂が続いた


「……名前」

会話のネタを必死に考えていた男がついに口をひらいた


「—――ギャラクシーレクイエム」

男の問いに女は食い気味に応える


「……お前は本当に俺から生まれたのか?」




―――その力強く頑丈で人間らしい生物を我々は『イブ』と呼んだ








―――手術から4ヶ月後


「お前とあってからもう4ヶ月か、時の流れは速いな」

留まることを知らない銃声の中、片目片腕の無い男が少し嬉しそうに語り掛ける


「マスターそれ毎月言ってますよね。もしかして彼女との記念日とかちゃんと覚えるタイプですか」

イブはそう言いながらマスターの晩御飯である缶詰を開ける


「どうだろうな?自分の誕生日すら忘れちまってるからな」


「それは困ります!誕生日プレゼント渡せないじゃないですか」

イブはまくしたてるようにそう言う

「じゃぁこうしましょう!今日がマスターの誕生日です」


「そりゃぁ……うれしいな」

男は照れくさそうにそう言いながらイブにご飯を食べさせてもらう


「それはよかったですね。じゃぁマスター、目を閉じてください。私が誕生日プレゼントをあげます」


「おうよ」

男は言われるがまま目をとじる

「ふははッ……お願いだから変な事するなよぉ」

男は嬉しそうに目を閉じたまま軽くからかう


「うッうるさいですよ!黙っててください」


イブが珍しく早口で応える


「へいへい」



二人の間に沈黙が流れる

おかげで彼女の不規則な息遣いと辺りで鳴り響く銃声だけが良く聞こえた



しかし、いくら待とうとも女は何もしない


しびれを切らし男が目を開けた瞬間、

イブの大きな瞳を隠すようにギュッとつぶられたまぶたと目が合った


小さくお互いのまつ毛が触れる


「……マスター、動かないでください」


イブが小さく囁いた直後、柔らかい何かが男の唇にふれた


「……ほ、ほら誕生日プレゼントですよ」


イブの耳がほんのり赤く染まっていた








――手術から7か月後


「マスター!」

女の叫び声が数多なる発砲音によりかき消される


「……ぁ……ぁぃ」

血が流れ、片方しかない腕があらぬ方向に曲がった男が小さく口を開く


「マスター、喋らないで!マスター……マスター!」


女は男を担ぎ、崩れかけたコンクリの階段を駆け下りる


もうすぐこの建物にもあの凶悪なロボット兵が入り込んでくるだろう。

それまでにどうにかこの男を連れてここから逃げなければ







―――『未来都市 ネオ・アーカディア ネオ・ルクシア区画』にて


 建物が打ち壊され地面にコンクリの破片がゴロゴロと転がる地面に薄暗い大きなテントが立っている

 テントの中にはいくつもの簡易ベットが置かれ、その上には血にまみれた人間たちが苦しそうに唸り声を上げ横たわっていた



そのベットの一つに横たわる男がいる


「……マスター」

その男の隣でか可愛らしい女が一人、心配そうに見守っていた


「アンタのマスターは死なさないさ、が死んだらこっちも面倒になるからね」


髪を短くまとめた女がそう言いながら男に注射を打ち込む


「う゛ッ!」

注射針が腕に刺さると同時に男が小さく唸り声を上げる


その声に隣で見守る可愛らしい女の瞳孔が大きくなる


「大丈夫、ただの……ただの麻酔さ」

髪を短くまとめた女はそう言いながら男に軟膏を塗り、包帯を巻く

「かなりの大けがだが、内臓はあまり傷付いてはいないみたいだね。ギャr……アンタのマスターは運がいいよ、あと4ヶ月もすればまた最前線に立てるさ」


髪を短くまとめた女はイブと言われる存在に目を合わせる事無く淡々と話した








―――男の戦線離脱から3ヶ月と19日後


「マスター!戦線復帰できてよかったですね!」

女は嬉しそうに飛び跳ねながらそう語り掛ける


「……あぁ」

片目片腕の無い男はそう静かに応える


これ以降、口を開く事無く淡々と戦場を歩いた





―――男の戦線復帰から11日後


「おはようございますマスター」

女は寝袋から起きる男を見るなり声を上げる


「……今日の作戦会議を開始する」


男はそう言うと短くシケったタバコに火をつける


「昨日また食料補給の遅延の報告があった……」


「……?つまり今日もご飯が無いということですか?」


「あぁ詰まる所そう言うことだ」

男はそう言うとタバコを深く吸うとタバコの火を擦り消し口を開いた


「……そして昨日の戦闘で確証したが俺たちの居場所が敵にバレている」


「……つまり?」

女は不思議そうに首をかしげる


「……俺たちはいつ襲撃されてもおかしく無いって事だ。だから―――」




―――パンッ




女の瞬きと同時に発砲音が響いた



女が瞬きを終え視界が戻った頃には、視界は赤く染まっていた



男はばたりと倒れると灰色のコンクリが赤く染まっていく


撃ち抜かれた頭は原形が無いほどに弾け飛んでいた




「……マ……マス」

その光景に女はワナワナと震え涙をこぼす


「マ……マスタァァ……」


女の叫び声と共に砕けたコンクリが舞い砂埃が起こる


「うぅッう゛あぁあああ……」


女の泣き声が静かに響いた







「―――しゃッ!ヘッショ!」


瓦礫の間に身を潜めたロボット兵が近くに潜む仲間に聞こえるように大きな声で喜ぶ


「……うぅん、砂埃のせいでもう一人見失ったわ」

もう一人のロボット兵はスコープを除きながらそうぼやく


「それはお前―――」





―――バキンッ



二人のロボット兵は一瞬にして吹き飛ばされた


―――我らが誇る最高の生物兵器によって






「—――うぅ………う゛ぅぅヴぅヴ!」

男の仇を取ったイブはその場で嚙み千切るように泣き声を殺し泣いていた


イブは涙が出なくなるまでうずくまり泣き続けた。


イブはスンと鼻をすすり涙をこらえると死体になったマスターの元へ

ヒックヒックと止まらないしゃっくりの中、歩き出した。


遠くでまた、銃声がした




―――バタ

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