第6話

      六 終焉


「暗いはなしのようだが、なに、心配は要らない。はるかな未来のことだからな。現代を生きる私たちには一切、まったく、絶対に、みじんも関係ない。それに人類はもっと早く滅びるかもしれない。大規模噴火や巨大隕石の衝突でね。そんなことより、君たちは来週の試験の準備に集中することだ。何しろ、この国の最高学府で学ぶという貴重な機会を得ているのだから、持っているうちは、その自然界でもまれな大きな脳を、最大限に活用するように。では、今日はここまで」


「試験うぜー。なあ、ノート貸して。うわ、きったねえ字。読めねえじゃん」

「要らないなら返してよ」


 ――ぼくの古い経過報告を見てみたけれども自分の書いたものが読めないのがとてもふしぎだ。言葉わいくらかわかるけれどもぜんたいの意味がわからない――


「冗談だって冗談。うん? どうした、浮かない顔して」

「さっきのはなしだよ。あれによれば、人類がいずれ知性を失うのは既定路線だ。ぼくらには関係ない遠い未来のことだとしても、進化の先が行き止まりで、ぼくらの世界、ぼくらの文明のことがすべて忘れ去られてしまうのはちょっと寂しいなって思ってさ」


 ――ぼくをかわいそーとおもわないでください。先生がいっていたようにぼくわりこうになるための二度目のきかいをあたえてもらえたことをうれしくおもていますなぜかというとこの世かいにあるなんてしらなかったたくさんのこともおぼいたし、ほんのちょっとのあいだだけれどそれが見れてよかたとおもているのです――

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