転生した先はアニメ世界だけど、どうせ路人でいるしかない

神炎悠真

第1話 五キロのお米と走馬灯

2023年9月1日


俺は海鳴野、24歳。東京でただのサラリーマンをしている。


つまらない中学時代、つまらない高校時代、つまらない大学時代——まったく味気ない人生だったな。


高一の時に一回彼女ができたことがあるけど、たぶん俺の顔がまあまあいいから?


俺の人生で一番嬉しかったことは、ラッキーマート(好运气商场)で二賞を当てたことだ。あの時俺はまだ8歳だった。


覚えているよ、賞品は5キロのお米だった。妹も母もすごく喜んでくれたし、父までもが驚いていた。


「おれたちごく普通の海鳴家にも、幸運な息子が出たとはな」


あれが俺の人生で、たった一度の幸運だった。


「ん?どうしてこんな過去のことを思い出すんだ?」


「練馬区……夜9時21分……交通事故……」


ぼんやりと気づいた。これが、いわゆる走馬灯なんだな。


「なるほど……こんなに血が流れてるのは、全部俺の血なんだな」


意識がだんだん遠のいていく。


「妹にスマホを買うって約束したのに……守れなくなるな」


平凡な俺は、死ぬときの執念までも、こんなにささやかなものだった。


白い光が俺を包み込んで、意識を失った。

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