読む者に何を見せるのか、何を聴かせるのか…。
その流れがとても巧みな作品だと思う。
主人公霧花の内面はずっと丁寧に描かれていき、
荒獅子の心情はほぼ外側からしか見せない。
が、後半で、すっと彼の内側に入り込んでいく。
「復讐」のキーワードがきっかけになって、荒獅子の心が動く。
動かされたという手ごたえが読者に残る。
説明を極力省いた描写で魅せる誠実さによって、
この二人の関係がどういうものになっていくのか――。
この作品は、何か大きな流れのほとりにある、
小さな、しかし力強い新たな流れの誕生に見える。
続きを読みたいと素直に思える一作である。