最強魔法少女は引きこもり転生令嬢として静かに暮らしたい〜いやいや婿探しに来たら、嫁が出来ました。ついでにバレた称号は神殺し(こいつのせいで世界を取る事になりました)〜

羽柴56

日常が壊れた!

 魔法少女、それは女の子が一度は憧れる変身ヒロイン。 

 私の前世はそんな女の子達の憧れ――魔法少女だった。人の目を見る事すら出来ない私が魔法少女? ふふっ、笑ってしまう。


 私の名前はヴィヴィ・ド・レヴァリエル。

 なんとも噛みそうな名前。

 辺境伯家の三姉妹の三女だ。

 容姿は前世と違い銀色の髪に透き通る様な白い肌の美少女。


 自分の前世を思い出したのは8歳の頃。

 前世から引き続き、引きこもりがちの私を心配した両親が無理やり外へ連れ出した時。

 魔物に襲われ、馬車の中で頭を打った時に前世の力に目覚めたのだ。

 幸い私以外の人間は皆気を失って、何をしたのかを見ていない。

 魔物の血を被って立ち竦む私はそのまま外が怖くなった事にし、以来ほとんど家から出ずに育った。

 しかし、状況が変わったのは15歳になった時である。

 貴族の学園への入学が急遽決まってしまった。


 私はこのまま両親の庇護の下、

何不自由なく暮らすつもりでいたのに。

 上二人の姉が相次いで嫁ぐ事が決まり、家の後を継ぐ事になったのである。


 貴族らしく華やかな応接間は、宴席と通夜が同時に行われている様な奇妙な空間となっていた。

 まぁお通夜状態なのは私だけなのだが。


 まず長女。私にだだ甘だったレフィおねぇちゃん。

 彼女はこの国の皇太子様に見初められ未来の王妃様となる事が決まった。

 困った様子を見せるが、満更でもない。


「皇太子様の許嫁だったランドール家の方のおいたが許せなくなっちゃってね? ちょっと注意したら大ごとになっちゃって……。 ヴィヴィちゃんのこと、置いて行くおねぇちゃんを許してね?」


 どうやらその許嫁は所為しょい、悪役令嬢というものだったらしい。

 目にあまるほどの悪行を重ねた結果、レフィおねぇちゃんの逆鱗に触れた。

 まぁそのあと文字にして10万字ほどのすったもんだの挙句、何故か王太子に見初められたとのことだ。

 ちなみにランドール家のご令嬢は、他国に留学に出されたらしい。

 

 私もここまではお祝いモードだった。


 いつも険しい顔の次女のマリー姉さまの珍しい優しげな表情に疑いもしなかったのだ。

 

「という訳でお父様。 私も姉上とタイミングを前後して嫁としてこの家をでます。 男爵家と家格は落ちる事になりますが、夫と共に王国の威信を守る盾になる所存でございます」


 この言葉に私は「はいぃ?」と大声を上げる。


 なんと軍務について、一年もせず平民上がりの有能な男に嫁ぐ事になったと言う。

 褒美として姉さまとの結婚を望み、結婚の為に魔王軍との南方戦線を平定したというのだ。

 ロマンチックな話。 

 ……だったら婿にくればいいのに。


 しかし流石に元平民が、辺境伯の家督を継ぐのは許されなかった。

 国の目論見やらが絡まり、姉さまが元平民に嫁ぐという事で決着がついてしまった。

 姉様にも一切異論がないのは、その表情で察した。

 あんな凛々しかった姉様のとろんととろけた表情は15年生きてきて初めて見た。


 二人してまるで物語のヒロインの様な馴れ初めである。


「ヴィヴィ、相手はお前が選んでいい。家柄もこの際貴族なら気にしない。 だから、我が家に婿を呼んできてくれ」 


 父の切実な言葉。


「ヴィヴィちゃん。 お外が怖いのに、無理を言ってごめんなさいね。婿さえ見つけたら帰ってきて良いから頑張って来てね」


 長姉と同じくだだ甘な母ですら、婿を見つけるのはマストなようだ。


 父母の言葉に『無理』と内心吐き捨てたが、お家の為だと仕方なく学園に入る事になったのだった。

 私の様なコミュ症に婿取りさせるくらいなら、養子でも取ればいいのに。

 しかしどうやら王家との取り決めで直系の血を絶やしてはならないらしい。


 迷惑な話だ。



 ◆


 ゴトゴトと揺れる馬車。

 残暑の残る眩しい太陽。

 密閉された空気。

 私を心配そうに見守る侍女。


 御屋敷から30分ほど、聖サントワーヌ学園への入学の為に7年振りに乗った馬車内は地獄と化していた。

 御者台に座る馴染みの使用人に声を掛ける。


「ごめん止まって……。 無理……」


 言葉と共に馬車は止まる。

 すぐに、私は外に飛び出し木々の陰に入った。 

 そして――。


『お見苦しい音声が流れました事をお詫び申し上げます』



 数分後、なんとかこみ上げる物を吐き出し終わる。

 青い顔をした私に侍女が近寄り口元を拭ってくれた。あぁうぅ……ありがと。

 長年の引きこもり生活により、私の体力はミジンコ並の水準のまま成長した。

 馬車の窓を全開に開けて、先ほどよりもゆっくりと進んで貰う。


 私は学園に向う馬車の中、前世の最後を思い出していた。前世もあいも変わらずコミュ症だった。


 変身願望の強さがそのまま魔法少女の強さへと変わる。私は引きこもりがちだったが、人一倍かわりたいと願った結果、最強になった。

 

 他の魔法少女とは別格の強さだった私は、最終決戦を一人で戦う羽目になったのだ。

 敵の親玉――異世界の神を一手に引き受ける。

 他の魔法少女達や軍隊は、私と異世界の神の戦いを邪魔しないように、他の敵を抑えてくれていた。

 次々とお互いの仲間達が散る中で、死に物狂いで私は戦う。

 そして最後の一撃と共に相討ちとなって世界を護って死んだのだ。


 変わりたいと願った結果。

 戦いに生きた人生だった。

 あの時誓ったのだ。もう力なんていらないって。

 力なんかいらない筈なのに、前世の記憶と共に力に目覚めた時はかなり焦った。

 私はその時から、静かに生きると決め、憧れるのをやめたのだ。


 そうして15年引きこもりつづけた私は、家族以外の前へ始めてお目通りする事になったのだった。


「ヴィヴィ様? 着きましたよ?」


 侍女のアリシアが私をそっと揺する。

 いつの間にか眠っていたらしい。

 どうやら膝枕をしてくれたようだ。

 アリシアは長年、人見知りの私の世話をしてくれている。

 年は私の二つ上。黒髪の頼れるお姉さん。

 私が寮に住むと言う事で、一緒についてきてくれたのだ。


「はぁい。 気が重いわ」


 寝ぼけまなこで起き上がりながら本音が漏れる。

 勉強は前世の知識から、それなりに出来る方だと思う。

 しかしこの学園は文武両道を謳う貴族の学校だ。

 戦える事が分かれば、下手すると魔王軍との戦いへと駆り出されかねない。


 この数年、私は自分の力を抑える努力だけは続けていた。

 あんな惨めな死に方はもう真っ平ごめんなのだ。


 その努力の結果、私は12歳の時の鑑定結果で戦闘能力のない一般人程度の魔力しかないと判定された。


 私は自分が力のない子羊だと、そう自信を持って入学式の能力検査へと向かう。

 後は素敵な婿を見つけるだけ……。そう思っていた。


 巨大な能力鑑定珠にでかでかと、


 称号:「神殺し」と不穏な文字が刻まれるまでは……。


あぁ学校なんか来るんじゃなかった!

 周囲の新入生からはヒソヒソと、「怖い……」「あれが、レヴァリエルの血被り姫か」などの恐怖と奇異の目が私に注がれる。

 逆に講師陣と見られる先生方は、期待もしくは険しい顔。

 明らかに私が望んだ平穏とは違い注目されていた。




――――――――――――――――――――――


またしてもとりあえず1話だけです。

長編版にするか考え中です。

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