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不良が公正したら何故、あんなにも持て囃されるのか。やった事は決して褒められるべきものではないだろうというのが私個人の意見である。
でもだからと言って全てを間引く程、私は冷血でもない。
生まれてこの方真面目ちゃん。どれだけハジケようとも、常に論理と秩序が私の全てである。だからこそ、不良がちょっと良い事して、チヤホヤされていると殴りたくなる。
高々少し良い事したぐらいで!! アンタの価値は上がらない!! と。
相当不貞腐れた顔をしていたのだろう。同居人が私の頬に指をめり込ませて来た。ぐにり、と、爪が食い込む程に。
「痛いよ」
「らしくもねぇ」
これが同居人、つまり瑠衣なりの励ましであり、気遣いでもあった。だから其れに免じて、私も同じ様に描いた知恵をそのまま話す事にした。
「不良が少し優しくしたからって、周りがチヤホヤするの、嫌いなの。私の方がずっと偉いのに」
「そうしないとまた道を踏み外すと思ってんだろ」
言い得て妙な言葉が帰ってきた。ある意味で非常に腑に落ちる話でもあった。だから少しの沈黙が私達の間を包み込む。
「そうだね。でもチヤホヤはしたくない。私がもしもそんな相手と顔を合わせたら『貴方はスタート地点に立ったばかり。其れも普通の人とは違って大きなハンデのあるスタート地点。つまりマイナスから頑張らないといけない』多分そう言って、組み込むかも知れない。
長い時間が掛かると思う。普通の人が皆勤賞なのに、彼だけはまだ出て来てないという孤独を味わうかも知れない。けれどもこれが、私が相手に出来る唯一の譲歩だよ」
分かっている。悪が公正するのはそれなりの労力が掛かると。また戻って欲しくないばっかりに、そうして甘くなるというのも。
けれども私の視点は変わらない。変えてはいけない。不良と一般人、何方も救うには、互いに違うハンデを設けなくてはならない」
私は甘くはないよ。常日頃からそんな様に。
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