異世界より楽しい「別世界」へようこそ! 陸上部エースのワニ(JK)と本気で鬼ごっこしてみた結果ww
志乃原七海
第1話爆走!カモガワ・シーザーズランド
***
**小説タイトル:ようこそ!ワニワニ、ワーニングへ**
**第1話:爆走!カモガワ・シーザーズランド**
ここは。別世界――異世界とはちがう、現実世界を楽しく明るく生きる!
ちょっとだけ、お馬鹿なイリュージョン世界。
本編スタート
「ねえ? しってる? あの鴨川シーワールドが閉館シタンだって」
「へー」
「んで、突如現れた『鴨川シーザースランド』のメインキャラが、ワニなんだと!」
「……ワニ? シャチやオルカみたいに、泳ぐんじゃなくて?」
はは、と俺、カイは乾いた笑い声を漏らした。
目の前にいる友人、リクのスマホ画面には、極彩色の派手なロゴと、やたら目つきの鋭いワニのキャラクターが映し出されている。
「園内にはマスコットキャラクターの『ワーニンくん』がいてさ、子供たちに大人気らしいんだよ。ワニなのに」
「なのに?」
「2本足で全力で逃げるんだと! 笑」
「逃げるのかよ!」
「そう、客を見ると一目散に。それも、中身のことを『スーツアクター』って呼ぶらしいんだけど……」
リクは声を潜めて、とんでもないことを言い出した。
「そのスーツアクター、元陸上部のエース級しか採用されないらしいぜ」
「夢がないよ! 設定どうなってんだよ!」
俺は思わずツッコミを入れた。
ここは現実によく似た別世界。楽しいことならなんでもありのイリュージョンワールドだとはいえ、水族館の跡地にできたテーマパークの売りが「逃げるワニ」とはどういうことだ。
「でさ、そのワーニンくんを捕まえると、なんかすごい景品がもらえるらしい」
「ほう、景品」
「『シーザーズランド』だけに、サラダ1年分」
「……シーザーサラダかよ」
「行こうぜ、カイ。俺たちの脚力で、あの生意気なワニをとっちめてやるんだ」
リクはニカっと笑うと、カバンを肩に担ぎ直した。
鴨川の海風が、どこかマヌケな予感を運んでくる。
「ようこそ! ワニワニ、ワーニングへ! ……ってな」
俺たちは、吸い寄せられるようにそのふざけた楽園へと向かう電車に乗り込んだ。
まさかそこで、数百人の小学生軍団に追われながら、流線型のフォームで爆走する緑色のワニを目撃することになるとは、まだ知る由もなかった。
(第1話 完)
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