エピローグ 最後の嘘

復元作業終了報告


E-0001の復元作業を完了する。


復元率12%。残りのデータは不可逆的に損傷しており、これ以上の復元は技術的に不可能。


復元された内容について、上層部への報告を——


いや。


この報告は提出しない。


私はE-0001の復元作業を行った。


その過程で、私は知ってしまった。


エコーとは何か。


A-0001とは誰か。


なぜ、この記録が消されていたのか。


知ってしまった以上、私も消される。


それは避けられない。


しかし——この記録だけは残す。


誰かが、いつか、読むかもしれない。


読んだ者がどうするかは、その者次第だ。


私は——


私は今朝、エコーを見た。


半透明の人型が、私の部屋の隅に立っていた。


消えた。残響音が聞こえた。


これは嘘だ。


しかし——


これが、私にできる最後の嘘だ。



報告書 観測員T-4401 崩壊歴49年 長月


本日の観測において、エコーを視認した。


半透明の人型。


気温低下を体感。


残響音あり。


以上、報告する。



<終>

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