第3話 公園という名の劇場

ドッグラン。

柵で囲まれた、自由の模型。


犬たちは走り、吠え、睨み合う。

強い個体が中心に集まり、弱い個体は周縁へ追いやられる。

序列。

見慣れた光景だ。


国家も、群れも、本質は同じだ。

盲目的な意志が、衝突し、正当化される。

勝者はルールを語り、敗者は沈黙する。


「モコちゃんも行きなよ!」


美咲に背中を押される。

私は走る。

短い足で、必死に。


最下位。

誰にも注目されない。


だが、私は知っている。

競争とは、意味を持たない運動である。


「惜しかったね〜、そんなむくれた顔しないで〜」

「……」


芝生の匂い。

空の青。

それだけで、十分だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る