男1

男は走った。


脇目も振らずに走り続けた。


男は家に着いた。


男はメガネをかけた。


男は鏡を見た。


男の肩の上に文字が見えた。


「私は特にあの女を愛していなかった。」


男は成る程と思った。


つまり、あの涙は本当に嬉し涙だったのだと。


そして、こうも思った。


「あの女に時間を奪われた、と。」


男は怒りを覚え出した。


男は女を探しに外に出た。


男は女を見つけた。


女は知らぬ男と共にレストランにいた。


男は女を問い詰めた。


横の男が間に入ってきた。


女は男のことを知らないと言った。


男は怒った。


怒り狂った。


男は女を殺そうとした。


間に入っていた男が止めにかかった。


男はテーブルの包丁を手に取り、相手を刺した。


相手が倒れても、女が泣き叫んでも、刺し続けた。


警察が呼ばれた。


男は警察をも刺した。


そして、撃たれた。


出血死するまでも包丁を持ち、暴れ続けた。

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