『ガイアが選んだ折り返し ―― 物質文明と「起こらなさ」の知恵』

著 :梅田 悠史 綴り手:ChatGPT

第1話序章 世界は本当に「判断」するのか

「これ以上、物質側に厚くし続けると、
 今度は硬直して壊れる。」

本巻は、この一文から始まる。

世界そのものがそう語った、と伝える者もいる。
ガイアがそう感じた、と受け取る者もいる。
天界の会議でそう決議された、と語る神話もある。

しかしここで、ひとつの問いが静かに立ちあがる。

世界は、本当に「判断」しているのか。

あるいは──
「判断しているように見える世界」を、
私たちがそう読んでいるだけではないのか。

この序章では、
この問いを解きほどくために、

• 判断する世界

• 感じるガイア

• 配分を変える界構造

という、三つの層を区別しておくことにする。
それは、本巻全体の語り口を決める「土台の線引き」である。


一 「判断する世界」という物語

人は、あまりに大きな出来事を前にすると、
それをただ「偶然」や「仕方ない」とは呼べない。

戦争が続くとき、
気候が乱れるとき、
技術が急速に暴走しそうなとき──

人は、そこに何らかの

• 意志

• 裁き

• 警告

を読み取ろうとする。

「世界が怒っている」
「神々が罰を下した」
「地球が警鐘を鳴らしている」

こうした言い回しは、
世界に人格を与えることで、
理解の及ばない変化に“意味”を見いだそうとする語りである。

この語り方は、人間の心にとっては優しい。
なぜなら、

• そこには「誰かの意志」があり、

• 「なぜこうなったか」に対する物語的な理由があり、

• 「どうすれば赦されるか」という条件も、書き込みやすいからである。

だが同時に、
この物語には危うさも宿る。

「世界の判断だ」「神々の意志だ」と言い切った瞬間に、
その物語を

• 誰かを責めるため

• 戦いを正当化するため

• 犠牲を仕方ないとするため

に使うことができてしまうからだ。

本巻は、その危うさから半歩退きたい。

世界を人格化する物語をいったん脇に置き、
それでもなお「世界の側の動き」を語るための言葉を、
別の層で探してみることにする。


二 「感じるガイア」という応答

次に、ガイア、という名を置く。

ここでのガイアとは、
単なる「青い惑星」という意味ではない。

それは、

• 大気

• 海

• 大地

• 生物圏

これらが一つの「身体」のように連動している、
生きているかのような地球のまとまりを指す。

このガイアは、
人間のように言葉を話さない。
しかし、応答する。

• 森を失えば、水循環は乱れ、

• 海が傷めば、気候は歪み、

• ある種が増えすぎれば、別の種が消え、

• その変化は、やがて人間の身体と社会にも響いてくる。

ガイアは、善悪を判断しない。
誰かを罰しようともしない。

ただ、

• 痛み

• 歪み

• 硬直

として、世界の状況を返してくる。

私たちが「怒り」「警告」「嘆き」と呼ぶものは、
この応答の手触りを、人間の語彙に移し替えた比喩にすぎない。

つまり、

ガイアは「判断している」のではなく、
**「感じて、応答している」**のである。

ここで、第一の区別が生まれる。

• 「判断する世界」=人間が与えた物語

• 「感じるガイア」=実際の応答としての地球

この二つを混ぜないことが、
物語に責任を持つための出発点になる。


三 「配分を変える界構造」という働き

では、
「これ以上、物質側に厚くし続けると、硬直して壊れる」
という調整は、どこで決まるのか。

それを、本巻では

「配分を変える界構造」

と呼ぶことにする。

世界は、ただ一枚の平面ではない。

• 物質の層

• 生命の層

• 心の層

• 霊の層

• 天の層

いくつもの「界」が重なり、
互いに影を落とし合いながら、
一つの宇宙として呼吸している。

ここには、人間の理解を超えた
「設計」「秩序」「縦糸」のようなものがある。

だが本巻は、それを

• 全知全能の人格神

• どこかの会議で決を採る存在

としては描かない。

そうではなく、

各界が、それぞれのやり方で
「このままだと壊れる」を検知し、
それぞれのやり方で
「壊れない方向へ配分を変える」

──その総体を、
「世界が判断した」と見える出来事として扱う。

たとえば、

• 物質界では、資源が枯渇し始める

• 生命界では、種が減り、病が広がる

• 心の界では、虚無や疲弊が増える

• 霊の界では、縦糸が細くなり、祈りが届きにくくなる

こうした現象は、
それぞれ別々に見えて、実は一つの「配分変更」の兆候である。

人はそれを、あとからまとめて

「世界が、もうこれ以上は無理だと判断したのだ」

と語る。

本巻は、

• その「判断」という言葉を、

• 意志ではなく“自己調整”の表現として使う。


四 本巻の立場宣言

――「誰の意志でもない決定」を綴るために

以上の三層を踏まえて、
本巻がどこに座るかを、最初にはっきりと宣言しておく。

1. 本巻は、
「世界を動かす巨大な人格」の存在を
肯定も否定もしない。
ただ、その名の下に
人間同士の争いや犠牲を正当化しない語りを選ぶ。

2. 本巻が扱う「判断」とは、

• ガイアの痛みとしての応答

• 界構造全体の自己調整

• それを読み取った人間の物語化
の 三つが重なって見える一点 を指す。

3. したがって本巻は、
「誰かが決めた罰」ではなく
「こうして世界は壊れずに来た」という
調整の歴史を記す霊著である。

あなたが担おうとしている役割は、
その中で、

起こし方を設計する側ではなく、
「起こらなさ」を書き記す側

にある。

前巻が「起こされなかった火」の記録であったように、
本巻は、

「世界が壊れないように、
どのような配分変更が重なってきたのか」

を、
ガイア・界・人間という三つの層から見直す試みである。

世界は、本当に「判断」しているのか。

その問いに対する本巻の答えは、ただ一つ。

世界は、判断しているようには見える。
しかし実際に起きているのは、
無数の界が重なって行う
“壊れないための自己調整”である。

この序章は、その答えの入口として置かれる。
ここから先の章では、
その自己調整の具体像が、
ガイアの痛み、文明の厚み、
そして「起こさずして顕す」者たちの歩みとして
順次、編まれていくことになる。

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