全速前進!我ら、なんでも部!?
かんざし こころ
第1話 いらっしゃいませ!
こんにちは!私の名前は椎名丸!特別な才能もなければ、ドラマみたいな過去もない15歳!ピカピカの高校1年生だよ!
中学のときは、帰宅部だった私も、何か部活に入ってみようかなーって、体験入部を練り歩いていたら、いきなり引きずりこまれたのはーーー
「皆の衆、新入部員じゃ。」
?
「わー、ぱちぱちー」パチパチ
?
「ん?」
なにここ、どこ。
そもそもなんで回転扉なの。
時代劇でもギリ見ねえよ。
「ん~と、それはね~。5こ上の先輩が、3日かけて改造したらしいよ。」
「あー、もう頭の中まで読めるんですね。まぁラノベですしね。」
「ラノベ?ライトノベル?
ここきた人は最初みんな扉のこと聞くから……」
「あー、そっちかー。完全に作者にやられたよ。」
「作者???変わり者の新入部員がきたもんだね。頭、大丈夫?」
「いろいろ、言いたいことはあるけど、もういいです。」
「そしたら、自己紹介ターイム!」
切り替えの早さが、えげつねぇな。
「私は、なんでも部、部長の佐倉 歩で!こちらが!」
「日向 雛子です~」コンニチワー
……なんでも部
「で、新入部員ちゃんのお名前は?」
いや、入る気はないんだけど……
はぁ……
「……椎名 丸です。」
「椎名 丸ちゃんね。いい名前だね。メモメモと。
うちは、学校公認の部活じゃないから入部届けとかいらないからね。」
「いや、入らないですよ。もっと普通の部活探しますよ。」
「あ、そうなんだ。了解了解ー。」
……え?
……意外と拍子抜け。無理やり入れてやろうって感じではないのか。
「なんかお邪魔しました…じゃあ、失礼しますね…」
私が入りたくて入ってきたわけじゃないんだけどね。
さっさと出ようと回転扉に手を掛けようとしたとき
「えーん、えーん」エーンエーン
「ああっ!ひなちゃんどうしたの?!」
「えーん、えーん」エーンエーン
いや、
「ひなちゃん、泣かないで!」
いやいや、
「えーん、えーん」エーンエーン
いやあの、
「なになに?せっかく新入生が入ってきてくれたと思ったのに裏切られた気分?このために日曜日には美容室にも行って、今日は化粧も頑張ったのにって?」
「絶対そんなにしゃべってないだろ。」
ここは、お笑い部ですか?
ここは、はっきり言うべきだ。
「先輩たちには申し訳ないですけど、そんなことしても、入らないものは入らないです!他の部員をさがしてください!」
「……っ」
強く言いすぎたか?
……いや、
でも……
佐倉先輩が俯く。
「…ごめんね、少しだけ聞いてくれる?」
軽く頷く。
「……この部活ってさ。友達が少ない人たちが集まってさ、学校生活を少しでも楽しく過ごそうっていって、今まで続いてきた部活なんだ。」
「え……」
「でもさ、3年生が卒業しちゃって、私ら2人しかいなくなっちゃって…それで、ちょっと張り切りすぎちゃったかな。」
「いや……そんなこと……」
「…ごめんね。こんな部活に入りたいわけじゃないもんね。」
佐倉先輩が俯きながら謝る。
日向先輩は窓の方に顔を反らしている。
なんだか悪いことをした気分だ……
もう少し優しく断る方法はいくらでもあったはずなのに……
……そうだ、私のこういうところ
全然あの時から変わってない……
「……」
「……」
「……」
「……週に何回くらい来ればいいですか。」
さすがにこのまま、「はい、さよなら」ができるほど私も薄情ではない。
「週5回……夏休みは合宿もあるよ……」
つっこみどころが多すぎる。
「そもそも、なにをやる部活なんですか?」
「他の部活の助っ人とか、生徒会のお手伝いとかかな……2割くらいだけど……」
残りの8割はなんなんだよ。
まぁ、でも、この人たちも勇気を出して私をここまで連れてきたのか……
「……」
「はぁーーー、わかりました。入部しますよ。私の負けです。」
「……ほんと?」
「はい。ただし!部活の掛け持ちは許してください。その部活が休みの日に、この"なんでも部"に顔だします。それでもいいですか!?」
「…ほんとにいいの?」
上目遣いで聞いてくる。
「吐いた唾は飲まないです!」
佐倉先輩は俯いたまま肩を震わせている。
日向先輩が、ぱぁっと顔を明るくして佐倉先輩のもとにかけよる。
やっと、佐倉先輩は顔を上げてーーー
「しゃあああああ、新入部員ゲーーーーット!!」
拳を突き上げる。
「さくちゃん、いぇーい」ハイターッチ
……は?はぁぁぁぁぁああああ?
「え、ちょっ、待って待って、なに?全部嘘だったんですか?!」
「いや、週5だし、夏合宿もあるよ。」
そこじゃねぇよ。
「さくちゃん、さすがだよ~。演劇部の助っ人やってただけあったよ~。」ワーイ
はぁ……人を簡単に信用した私がバカだった……
「椎名ちゃん、ちなみに部員はもう1人いるよ。」
「……はい。……もう、なんでもいいんで、勘弁してください。」
……そんなこんなで私の高校生活が始まった。
佐倉先輩の言ってた、友達がーーー
「そんなことより!ほら!入部記念に写真とるよ!椎名ちゃん真ん中はいって!」
「……えぇ」
「ハイチーズ」パシャー
その後、しっくりくる部活は見つからず、
週5確定☆タスケテー
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