調香師である自分が知らない香りをただよわせる少女に遭遇したとき。彼女はその香りを追い続け、すぐ目の前で笑う少女を捉えんと足掻き……その果ては、予知のおよばぬ壮大な、まさに未知の存在だった。「未知」の畏怖をたくみに調えあげた掌編。
人間の五感の中でも、嗅覚は特に記憶と結びつくそうで、プルースト効果という名前まである。本作を読んで、私は懐かしさを覚えました。
写真展で匂いを狩る調香師が、未知の香りの少女ミチカに遭遇。ラボ描写が細かく、成分を追うほど立場が反転していくのが面白い。短編なので一気に読めます。文体も整っていてテンポもよい。終盤の視点反転と循環オチにはぞっとしました。
SF? ホラー? 現代ドラマ?調香師という、一般にはなじみのない、しかしいないと困る職業の主人公とその世界を丹念に描きながら、ミステリーの雰囲気とSFの要素をふんだんに使い、ホラーのような怖さを演出する。何ですかこれは!端正に、ストイックに、丁寧に練られた文章が、静かに怖さを積み上げていきます。何ですかこれは!短編として無駄がない、研ぎ澄まされた傑作です。得体のしれない怖さがある、SFであり、ホラーです。ぜひご覧あれ