クリスマスイブイブイブイブイブイブイブイブ

コトワリ

クリスマスイブイブイブイブイブイブイブイブ

 12/17


「俺と付き合ってください!!」

「無理。」


 授業終わりの放課後、私はクラスの知り合いどまりに過ぎない男子に告白された。もちろん速攻断った。


「どうして!?」

「どうしてもこうしてもないわよ…。」


 世間はすでにメリークリスマスモード。雪は降ってロフトには赤と白が目立って。コンビニに行けばケーキだのチキンだのチラシがわんさか自由に手に取れる時期。そんな時期に告白だなんて、あからさま過ぎるでしょ。


「クリスマス一人で過ごしたくないからって、一週間前に告白する奴があるか。」

「か、関係ない!俺は本当に渋美の事が好きなんだ!」

「はぁ…。」


 無意味な熱意を向け続けるこの男は、鹿井渡仲しかいとなか。一応さっき知り合いどまりとは言ったけど、関わり合いというか、歴はまぁまぁ長い。小学校から同じクラスで、中学校も同じクラスで、中高一貫だから仕方なく高校も同じになってしまって。

 だからと言って仲が良いわけではないことはわかってほしい。男女間の友情は存在しないって偉い人が言ってた。万葉集にも書いてある、多分。


「何度言っても意味ないよ。私は誰とも付き合わない。てか、この時期に彼氏できたら友達に笑われるわ。ヤリ目的だろって。」

「槍?なんだ槍って。戦うのか?」

「突き刺してやろうか。てか、なんで私なのよ。」


 残念ながらというべきか、渡仲はイケメンだ。

 出来る限り認めたくないが、渡仲はイケメンなのだ。

 神、どうしてこんな性格の男をイケメンにしてしまったんだ…。


「昔から好きだったんだよ!」

「なら昔に告れよ…。クリスマス過ごすなら、他の女の子でもいいんじゃない?」


 おっと、時間がまずい。今日は帰ってすぐ課題をしようと思っていたのに、こんなのに引き止められちゃ人生がもったいない。捲し立てよう。


「渡仲イケメンだしさ。すぐできるよ、適当に告れば。前に渡仲の事好きって人聞いたし。ね、私は諦めてさ。どう?」

「俺は渋美が好きなんだって言ってるだろ。それに好きでもないやつと付き合ったって、大切にしてやれないじゃねぇか。」


 神よ、この無駄に性格のいい男をどうにかしてください。

 渡仲は悪い意味で良い奴だ。誰にでも隔たりなく仲良くする。そのせいで勘違いする女子が多い事も事実で、前に渡仲の事が好きだって言ってる子も何人かいたのも事実だ。

 私は好かないが。


「あのさ、私にまでそういう優しい男ですよ態度しないでよ。わかってんだから本性。」

「渋美…。」

「なんと言われても、そんな表情されても。私は貴方とは付き合わない。クリスマスイブに周りの男子に自慢するためだけに付き合わされるようなおもちゃじゃないの。私は。」

「うぅ…違うって言ってんじゃん…。」

「知らん。」


 一気に突き放すと、渡仲は膝を追って崩れ落ちた。演技らしいその動き。情けない…。こんなのに私のヴァージン捧げてたまるか。舌切って死ぬわ。


「全く…。」


 でも終わったかな。結構時間を食っちゃった。早く帰って課題しなきゃ。

 私は机の上に置いておいた鞄を持ち上げて、教室の出口にもたれかかった。


「ほら、早く帰るよ。今日は私の家で課題するって約束でしょ。」

「はーい…。」


 とぼとぼと立ち膝で近づいてくる渡仲がイラついて。私は思いっきりドロップキックをプレゼントしましたとさ。

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