僕がこの世界の主人公だと思っていたら、本物がやってきた ~金持ち嫌味キャラVSヒーロー~

猿亀合戦

第1話 僕はこの世界の主人公

僕の1日がはじまる。僕は、この世界の主人公だ。


「おはようございます」

使用人が僕に挨拶をする。城のような造りの屋敷内で優雅に朝食をとる。

「ああ、すまないが、今日は迎えを19時によこしてくれないか。部活があるんでね」

僕がそばに控える使用人に声をかける。

「かしこまりました」


リムジンに乗って学校に向かう。リムジンには使用人の二人も同席している。ユマとタケルだ。彼らは僕の同級生でもある。さすがに高校で使用人をおおっぴらにつれ歩くわけにはいかない。同級生として入学してもらってるわけだ。給金も発生している。

「サネアツ様、本日のご予定をうかがってもよろしいですか」

タケルが言った。

「ああ、放課後は部活をする。部室に集合だ」

僕が答えた。

「かしこまりました」

タケルが答えた。


学校につくと、注目される。女子生徒からは憧れの、男子生徒からは羨望の目で見られる。無理もない。

財閥の跡取りというだけではない。スポーツ、勉学、文芸、あらゆる分野で功績を残してきた。

おまけに、このルックス、天は二物を与えたどころの話ではないのだ。

凡人からすれば、手の届かない存在が近くにいる、というわけだ。

教員にも一目も二目も置かれている。当然だ。彼らの年収ほどの服を着て歩いているのだから。


放課後、部室に向かう。表面上は文芸部ということになっている。僕と使用人二人だけの活動だ。目的は一つ。

「それでは、サクヤ様のサネアツ様に対する好感度について報告させていただきます」

ユマがプロジェクタで資料を壁に写した。

「前回に比べ、2ポイント上昇です。休み時間にご歓談されたのが好感触だったようです」

「ふん、計算通りだな」

僕は当然だ、という顔をした。

「ユマの調べた情報を活用して話題を厳選したかいがありますね」

タケルがうなずいた。

「女子生徒ネットワークを活用しての、サネアツ様のポジティブキャンペーンも継続しております」

ユマがそう言った。

「うん、それでいい。次は男子生徒の人気だ。タケル、頼む」

僕がそう言うとタケルが代わりにプレゼンを始めた。

「男子生徒人気ランキング一位は変わらずサクヤ様です。二位のマナ様と26ポイント差。現状、逆転の兆候はありませんね」

「ふん、なら、このままサクヤ攻略で良さそうだな」

財閥の跡取りとして、交際相手も厳選する必要がある。そこで、同じく財閥の娘であるサクヤに目を付けた。彼女は才色兼備と評判で男子生徒の人気も高い僕にふさわしい相手と思えなくもない。

一番の人間には一番のパートナーがふさわしい。

「なら、次の議題はサクヤ攻略の次の一手だな。ユマ、なにかあるか?」

僕がそう言った。

「その前に一点、懸念事項がございます」

「なんだ」

「サクヤ様が最近親しくされている男子生徒がいらっしゃいます」

「はあ、まったくかわいそうな男だな。僕がライバルとも知らず。誰だそいつは」

「リュウガ様です」

知らん。聞いたことないぞ。

「・・・本当に誰なんだよ。そんなやついたか?」

僕はタケルを見た。

「高校からの編入組ですよ」

ああ、そういうことか。うちの高校は幼稚園からの一貫校だが、少数の外部編入生がいる。

「なんだよ、それじゃ一般家庭出身じゃないか。庶民だろ?いるんだなあ、身分違いの恋をする人間って」

僕はしみじみとあわれんだ。

「まあ、気にしなくていいだろう。ライバルにもならないだろうから」

僕は手を振った。

「ですが、サネアツ様」

ユマが僕の顔をじっと見つめた。なんだよ。

「現時点で、サクヤ様の好感度は、リュウガ様の方がサネアツ様より上です」

「へえっ?」

思いがけない言葉に、部室内に情けない声が響いた。

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