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何時死ぬか分からない。どんな風に死ぬのかも分からない。ただ一つ恐れる事は、この知恵が失われる事かも知れない。未来永劫に。


何故物を書くのか。流行りジャンルじゃない癖に。何故このサイトに投稿を続けるのか。大して人気もない癖に。そんな事は分かっている。自分の二千にも及ぶ短編を見れば其れは分かる。

私の同居人は其れに対してただ淡々と『生き様を残したいから』と言っていた。私もそうだと思っていた。しかし今は若干方向性が違って来たように思う。

死ぬのは特段怖くは無い。怖いのはその時に感じる痛みだけである。その後の事は何があるかも分からないし、良くも悪くも分からない。ただ意識がとろりと変わるものだと思っている。だから必然的にこの身に起こるのは、痛みだけだの思っている。

まぁだから死への恐怖はそこまでではないのだが、私の知恵が、知恵そのものが失われる方が恐ろしい。考える事が出来なくなったら、思考が出来なくなったら、これまでの様に発展する事が出来なくなったら、そう思うと死んだ方がマシだとさえ思えてしまう。

だから、書くのである。何時死んでも構わない様に。私が海に撒いた知恵が何処かで芽吹き、生き長らえる様に。誰かの記憶に残る様に。


「ねぇ、瑠衣たん。死ぬの怖くない?」

急に話し掛けられた瑠衣は僅かに顔を上げて、視線を左右に動かした。其から徐に薄い唇を開き、ただ淡々とこう言った。

「考えた事ねぇ」

「そう。私は何時も死んでる様な物だから、死ぬのは怖くないんだよね。意識が飛ぶのなんて、仕事中。普通にある事だし。死ぬ時痛いのは嫌かなってぐらい。でも」

そう。死んでる様なものである。明日死んでも構わないと思って生きている。ただ痛いのは勘弁して欲しいというだけで。生き地獄を味わいたくないというだけで。ぽっくり逝きたいだけで。

「この思考が、知恵が失われるのは嫌かな。私の幼少期は褒められた物ではないし、今の知恵を手に入れる為に、あの過酷な幼少期を繰り返すのも嫌。だから生まれ変わるつもりもない。

だから少しでも長く物を書かなきゃいけないの。

この世界で芽吹いているのは王道だけじゃないんだって。苦しい現実もあるんだって。私は高らかに言い続ける」

『あそこにあるの、全部似たり寄ったり』、『承認欲求を満たす為だけの場所』、『頭おかしいヤツの魔境』そんな意見を覆す為に。

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