電脳世界に迷い込んだ美少女
Wildvogel
第一話 「探そうよ」
仰向けの状態でゆっくりと目を開けたミオの目の前には、真っ暗な景色が広がっていた。
「ここは……」
ゆっくりと起き上がり、周囲を見渡すが、真っ暗で何も見えない。
ミオは手探りで出口を探し始める。
「ん……?」
出口を探し始めてから二分後、ミオの右掌にひんやりとした感覚が広がる。
「外に繋がるドアかな……」
ミオはドアノブのようなものをしっかりと握り、ゆっくりと捻ると、徐々に手前に引いていく。
ドアを完全に開け放った瞬間、ミオは目の前の景色に唖然とする。
「どこ……? ここ……」
ミオの目の前には、現実世界とかけ離れたコンピューターグラフィックのような景色が広がっていた。
ミオは上空の青紫色の色彩を眺め、ただただ立ち尽くす。
この世界に行きついたいきさつを思い出そうとするが、脳の引き出しに記憶はなかった。
顔を俯けた瞬間、ミオは自分の手の異変に気づく。
「何……これ……」
機械が埋め込まれたような自分の両手に、ミオの口から悲しさの声が漏れる。
「これから、どうすればいいの……?」
ミオは顔を俯けたまま右足から踏み込む。
次々とロボットが通り過ぎる傍を歩んでいくと、コンビニエンスストアのような看板が目に飛び込む。
「お腹空いたな……」
ミオの足は看板に誘われるように速まり、やがて店の前に達する。
だが、自動ドア越しに見える景色に、ミオはため息をつく。
棚に並べられていたのは、オイルや金属といった商品だった。人間が口にできるものではない。
ミオは落胆し、顔を俯けると再び歩みを進めようとした。
その時――。
「どうしたの?」
背後から、このような言葉が聞こえてきた。だが、その声に人間味はない。
機械的な声だった。
ミオは浮かせた右足を地に下ろすと、ゆっくりと振り向く。
ミオの目に飛び込んできたのは、犬のような見た目をした四足歩行の小型ロボットだった。
ミオは体の正面を小型ロボットに向けると、そのまましゃがみ込む。
小型ロボットは警戒する様子を見せることなく歩み、ミオの右膝に両前足を乗せる。
ミオの悲しげな表情は徐々に笑みへと変わる。
ミオが小型ロボットの頭を右手で撫でると、このような言葉が聞こえてきた。
「君はどこから来たの?」
声は、小型ロボットから発せられた。
ミオは「うん……」と前置きし、小型ロボットの問いにこたえる。
「私、地球にいたの」
小型ロボットはミオの言葉を聞き、目の位置を青く光らせる。
「地球?」
「うん。緑がいっぱいあってね……」
小型ロボットはミオの説明を聞き、目の位置を今度は白く光らせる。
「いってみたいなあ……」
小型ロボットの言葉に、ミオは顔を俯ける。
「連れていってあげたいけど、戻る方法が分からないし……」
ミオの言葉から若干の間の後、小型ロボットが声を発する。
「探そうよ。元の世界に戻る方法を」
小型ロボットが放つ白い光は輝きを増し、ミオの背後の道を眩しく照らした。
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