「幼馴染にして圧倒的強者のイリスが僕を認めてくれた」

 轟音と砂煙が吹きすさぶ中で、そこだけまるで空間を切り取ったかのような凪があった。


 そいつは重心を深く落とす。

 腰に剣を据え、次の瞬間の一閃――


 魔物たちが一瞬で絶命し、その風圧は岩竜ですら後ずさらせた。


「なに……あれ……」


 リナがぽかんとして思わず漏らした。


「リナ! マリエさん!」


 二人に迫るゴブリンを切り伏せて、もう一度脱出できるかどうかを探る。

 だが、その声に向こうも気づいたらしい。


 魔物たちを確実に屠りながら、気づけば、そいつは僕たちの前に立っていた。


「君――」


 彼女は一瞬驚いたようにハッと目を見開いた。

 僕にも見覚えがあった。

 あの剣閃――そして、目の前に現れた彼女。


「岩竜……ちょっと、やっかいね」


 彼女は一瞬目を伏せたが、ゆっくりと岩竜の方を振り返って呟く。


「イリス……」

「今はここをどうにかする方が先、そうでしょ?」


 僕は黙って頷いた。

 その瞬間、再び僕の身体が一段重くなった感じがした。


 同時に、彼女――イリスをあの白い靄が包み込む。


「これ……そう、変わらないのね」


 イリスが笑った気がした。


 岩竜に対峙したイリスは、さっきと同じように重心を落とし、目を閉じる。

 白い靄が膨れ上がったように見えた。


 イリスがカッと目を開くと同時に剣閃が放たれ、同時に甲高い金属音が響く。


 ──鞘に剣を収めるカチリという音と共に、岩竜の身体が轟音を立ててバラバラに崩れていった。


*


「久しぶりだね、アル……アルト」


「あ、あぁ」


イリスに大分遅れて、城の騎士たちがやってきて、付近の掃討と岩竜の後片付けを始めていた。

僕たちは岩竜発生時の事情聴取という名目で、待機を命じられていたが、不自由というわけでなかった。


「この状況で、よく生き残れたな……素直に称賛する」


「……彼女たちのおかげさ。一人だったら……死んでた」


リナとマリエは、緊張が解けたのか、いつものようにじゃれあっている。

その様子に僕も安堵の息をついた。


イリスはそんな僕の様子をじっと見ているようだった。昔もそんなふうに見ている時あって、むず痒く思ったことがあったのを思い出した。


イリスはふっと笑って立ち上がると、手を差し出してきた。


「困ったときは、声をかけて」


「……ああ」


僕はイリスの手を、しっかりと握り返した。


それ以上、言葉は交わさなかった。

騎士たちが周囲の確認を終え、状況が落ち着いたのを見て、

僕たちは簡単に礼を告げ、ダンジョンを後にした。

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