アイランド・コア 天国への階段

未来ミキ

第1話 アイランド・コア

 1989年(平成元年)太平洋側の海上に小さな島が生まれました。

 何度かの地震による地殻変動で出来たその島の名前は、日本では昭和から平成に変わる時に誕生したので初めは「平和島」と名付けられました。競馬場みたいだと批判を受け、今度は「夢の島」になりました。こちらもゴミ処理場をイメージすると批判が相次ぎ、カタカナ名の「アイランド.コア」に決まりました。

 調査を経て、植林され緑が生い茂るその島に、30年後の2019年(令和元年)4階建て地下1階のマンションが建てられました。

 そのマンション付きの島を購入したのは、政治家の方で介護事業の会長でした。そのマンションは、サービス付き高齢者住宅として使用する為に造られていました。


(サービス付き高齢者住宅とは、有料老人ホームですが、介護付き老人ホームではないです。その違いは初期費用や毎月かかる費用が全く違います。

 サービス付き高齢者住宅は、基本は個室で24時間スタッフがいますが、サービスには介護や部屋の掃除や洗濯は含まれていません。介護保険を利用して訪問介護として別に料金が発生します。

利用者様が介護認定を受けて、要支援1、2 要介護1〜5に分かれていて、数字が高くなる程、介護度が上がり重度となります。

介護度数にに応じて一ヶ月に使える点数が決まり、デイサービスや生活援助、身体介護等のサービスを介護保険で利用出来ます。

費用の自己負担額は収入に応じて1割から3割となります。点数が足りない方は、自費になります。

 サービス付きのサービスとは、その施設ではクリーニングや宅配等のお取次ぎ、介護保険利用等のご相談や緊急時のコール対応等です。

 初期費用は、家賃の二ヶ月分と敷金だけですが、家賃の他にサービス料や食事代がかかります。比較的自立されている方が入居することを目的に作られた物でした。


 一方の介護付き老人ホーは、初期費用が施設に寄って違いがあります。何百万から高い所は三千万円越える所もあります。毎月の費用は、介護付きなのでサービス付き高齢者住宅よりも高くなっています。初期費用を多く払えば毎月の費用は安くなります。

利用者様が入居してから亡くなる迄の年数により初期費用が戻って来る場合もあります。

 サービス付き高齢者住宅は、オムツ代等も自己負担ですが、介護付き老人ホームでは、オムツ代や介護は含まれています。

 

 費用が安いのは、特別養護老人ホーム(特養)ですが、要介護3以上の方でないと入れず、介護士や看護師の人数が、介護される方の人数に対して何人と国で決められています。

 特別養護老人ホームは、最期まで(お看取り)入居される方が多く、近年は平均寿命が上がり、なかなか空きが出ないようです。空きが出ると言う事は、入居者様が亡くなられると言う事です。空きを望むと言う事は、誰かが亡くなるのを待つと言う事なので複雑な気持ちです)


 サービス付き高齢者住宅には、介護度の高い方をご家族が自宅で介護出来ない場合で、特養の空きが出る迄の期間を待つ場所として入居される方もいらっしゃいます。

まだお元気な方でも、お子様の近くの施設に入られたり、一人暮らしに不安を持つ方もいらっしゃいます。


 アイランド・コアにある施設名はキャット館でした。名前の由来は、誰かが海を渡り、島に妊娠した一匹の猫を捨てたのがきっかけで、施設が開業する前から島には沢山の野良猫がいました。通称名が「猫島」と呼ばれるようになりました。


 本土からアイランド・コアのキャット館に行くには、船だけでした。波が高くて船が出せない時の為に、備蓄倉庫には沢山の水や食料が用意されていました。

            

 私がアイランド・コアにある施設キャット館を訪れたのは、設立して三年目でした。

10年前に66歳で母を亡くした私は、亡くなった母を生き返らせて見学を希望しました。

とは言っても、本当に生き返らせた訳ではないです。

 サービス付き高齢者住宅は、業界ではサ高住と呼ばれています。サ高住は介護の資格が無くても働けます。私はヘルパー2級を所持していましたが、ブランクがありほぼ未経験に近かったのです。


 介護施設入居者の仲介業社のホームページで見つけたアイランド・コアにあるキャット館を見て、猫好きの私はすぐに資料を取り寄せました。


“亡くなつた母を生き返らせて”母が入居する施設を探している事にして、面接ではなく施設見学を申し込みました。すると仲介業社から、すぐに電話があり見学希望日をセッティングして頂きました。


 

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