第5話

エピソード5:後付解釈


しかしそれ以来、桂からの連絡が途絶えたことに、やはり“からかわれたんだ!”という勝手な自己嫌悪と、桂が与えてくれた特別な対価を失ったことによる人恋しい渇望が等海に静かに近づいてくる。


そんな気配を身体で感じながらも街中を流していると、ふっと目の前で手があがる。

ハザードを出しながら、減速し車を停止しドアを開ける。

「ハイ、どうぞ!」と等海。

男性が乗り込む「お願いします。」

「どちらへ行きますか?」等海は、そう尋ねながら振り返ると、「あっ!」そこには、隣人の美浦の顔があった。

「あれ?こんにちは、、、あっもう、こんばんは、、か!」

「千池さんって、タクシーのドライバーさんだったんですね!?」

「美浦さん、行先は?」

「家です。」

「ハイ!かしこまりました。」等海はドアを閉めると走り始めた。

「ところで美浦さん、お仕事は何をされているんですか?」

「えっ、僕ですか?大学生です。正確には来月の4月が入学式なんですけど、2浪しちゃって、やっと入学できたんですよ!」


「ところで、ひとつ聞いてもいいですか?僕の部屋に幽霊が出るみたいなんです。なんていうか、突然、壁が少し振動して、、、なんか女の人のすすり泣くような声が聞こえるんですけど、214号室は聞こえませんか?」

それを聞いて、等海は絶句した!(ヤバい!アノ声きかれてる!)

「そ、そ、そうなんですね、、、私は気が付かなかったな~!」焦りながらも答える。

(もしかして、私を誘ってる?それとも、ホントに何も気づいてない??)

戸惑いながらも、やがてタクシーは目的地に到着する。

「どうもありがとう!お仕事気を付けて下さい。」

彼はそう言い残し料金を支払って降りていった。


等海は、もしかして自慰がバレているかもしれないという不安と共に「自分はどこまで堕ちていくのだろう?」という更なる自己嫌悪に襲われた。

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