猫と遺書
@KAIJIN2004
第1話 遺書
「にゃぁあん」
ゴロゴロと膝の上で彼女は鳴いた。
「こら、あんまり鳴くなよ。ご近所さんに迷惑だろ。って言ってもご近所さんなんていないんだけどな」
遠くに小さな火の塊と、建物が崩れるのが見えた。
「今回はこんなもんか、小さいな」
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辺り一面瓦礫の山、視界を遮る高い建物が全くないこの世界は、まさに世紀末と呼ぶにふさわしい。
そんな中、奇妙に形を留めた10階建てのマンションの最上階に、俺はいる。
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「書き出しはこんなもんでいいかな?リン」
彼女は眠たそうにこちらを見つめている。
「そんな顔するなよ。こんなご時世だ。俺も、いつ死ぬか分かったもんじゃない。」
「にやぁん」
「そうだろ?お前には読めないだろうけど、こうして書いておこうと思うんだ。いわゆる"遺書"ってやつだ。あいにく俺は目立ちたがり屋なんでね」
気に食わなかったのか、彼女は膝から降りてどこかへ行ってしまった。
「続きでも書くか。」
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数え方が間違っていなければ、今年で20になる。
俺が生まれる少し前、人類には超能力が使える新しいタイプの人種が誕生した。
その新しいタイプの人間は当時の科学と、人々の需要に基づき、指数関数的に数を増やしていった。
争いも、それに比例して勃発した。
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「リン、ほらご飯だぞ」
さっきの態度とは裏腹に、興味津々でこちらに駆け寄る彼女。
「お前ほんと手のひら返しがすごいよな。猫だからこの場合肉球になるのかな。」
そう言ってツナ缶をめくる。
「この遺書はさ、こんな争いを知らない遠い先の人とか、はたまた宇宙人とか。誰に見られてもいいように書きたいんだ。」
彼女は食べるのに夢中だ。
「色んな人に読んでもらいたいだろ?まあ理由はさっき言った通りさ。」
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俺はその紛争の中生まれた。
こんな時代、俺はいつ死ぬか分からない。
だからこうして、俺が生きた証を残しておこうと思うんだ。
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