第2章 曇り空の向こう側
春が過ぎ、夏が近づく頃。
結菜の周りは就活や将来の話題でいっぱいになった。
「結菜は?何か決めた?」
花音が尋ねる。
「まだ…。色んなボランティアとか見てるんだけど、ピンと来なくて」
「大丈夫。ゆいは自分で“これだ!”って思える瞬間が来るから」
そう言ってくれるけど、心は焦るばかりだった。
しかも最近——悠斗ともすれ違いが増えていた。
連絡は返ってくるけど、短い。
会う約束をしても、研究室の事情で何度も流れた。
“私…必要とされてないのかな……”
そんな不安が、胸にゆっくり積もっていく。
ある日、大学のボランティア紹介で知り合った蒼真に声をかけられた。
「結菜さん、この前の資料ありがとう。すごく助かりました」
「ううん、全然!」
蒼真は少し不器用で、でも真面目な後輩だった。
悩んでいるとすぐ気づいて声をかけてくれる。
「何か悩みあります?」
「え…どうして?」
「顔に出てました」
思わず笑ってしまう。
「大したことじゃないけど…最近、うまくいかないなって」
そのやり取りを偶然、悠斗が見ていた——。
夜。久しぶりに二人で会えた帰り道。
沈黙が続き、結菜が耐えきれず口を開いた。
「最近……なんか、距離感じる」
「……研究が忙しくて」
「それだけ?」
「それだけだよ」
本当の理由を言ってない気がした。
その曖昧さが胸に刺さる。
「ごめん。今日は帰るね」
結菜が歩き出すと、悠斗は何も言えなかった。
曇り空が、広がっていくようだった。
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