君が照らす晴れ模様

ともね

【プロローグ】

春の風は、ふわりと甘い。

その匂いを胸いっぱいに吸い込むたび、「また今年も始まるんだ」と結菜は思う。


けれど、その始まりがいつも楽しみだったわけじゃない。

大学生活にも慣れ、日々は穏やかで、友達にも恵まれている。

それなのに——胸の奥にはずっと小さな曇りが残っていた。


“私は、この先どうしたいんだろう。”


答えが見つからないまま、結菜は春を迎えた。

その春が、未来のすべてを変えてしまうとも知らずに。

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