義憤の念から暴君ディオニス殺害を企てた羊飼いのメロス。かくて誰もが知る『走れメロス』が語られるかに思われたが……3日めの朝、ディオニウスが何者かに殺害されたのだ。容疑者は当然メロスである。が、妹の結婚式に出席していた彼には不可能。果たして人質から親友同様の容疑者へ立場を変じたセリヌンティウスは、謎の究明へ乗り出した。
名作をIFミステリー化した本作、探偵役のセリヌンティウスは自身の無罪を証明することを強いられるわけですが、相手は親友メロスの鉄壁のアリバイですよ。これがもう固い!
視点というものは物語の様相をまるで変えてしまうものですけれども、著者さんのこの捻り具合、実に読者を焦らして盛り上げてくれるのですよねぇ。いや、メロスがこうなると憎らしくてたまりませんよ。
そして来るセリヌンティウスとメロスの直接対決! けして派手派手しさはない、しかし緊迫引き絞られた言の葉の攻防、果てに明かされて証される真実とは!?
転じに転じて辿り着く末路、その様には息を飲むよりありませんよ!
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=髙橋剛)