三十代主婦、axesへ行く

櫂矢 真衣

第1話

 人は誰しも好きな服を着ていいし、着るべきだ。


 自分らしく生きていこう。


 みたいなメッセージが、世の中には溢れている。


 いい話だよね、そういうの。


 と、どこか自分は関係ないわ、みたいな心持で高みの見物を決め込んでいた私だった。


 なぜなら私は、服にこだわりがあるタイプではない。


 服と言えば、ユニクロかGUかしまむらの女である。やっぱ動きやすいのが一番だよね、とつねづね思っている。


 そんな私なので、服のブランドとか、全く知らない。


 唯一知っているのは、大学生の時友人に連れられて行って、あまりの女の子らしいオーラに気おされて退散してきたaxesだけである。


 これは、二十代の頃に尻尾を撒いて逃げた私が、三十代になってようやくaxesの門を叩いた話である。

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