夏、

 蝉の鳴き声が苦手だ。


 ジワジワジワジワ。ジワジワジワジワ。まるで、シネシネシネシネシネシネシネ。と言われているようで。


 「恐いんだ。」と、いつか君に漏らした。


 考えすぎよ、と笑って揺れた君の肩からは何か、いい匂いがした。


 それから蝉の声は煩いだけになった。恐くもなくなった。ただ、何も感じなくなった。





 そう思っていた。





 蝉の抜け殻を見つける。蝉の抜け殻だと思ったそれは死骸だった。夏の真っ盛りだった。


 弔うように蝉たちがシネシネと泣いている。


 ゆらゆらと揺れる君の影からは強烈な、線香の臭いがした。

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