第7話 光る宇宙
プロローグ:オババの宣言
舞台が暗転し、静寂の中にひび割れた星屑のような光が瞬く。
オババ(菊池凛子風)
「時を 少し早めます。
時は 宇宙世紀 0079──
人類は増えすぎた人口を宇宙に求め
月の衛星軌道、ラングラジュポイントに
巨大なスペースコロニーを多数建設しました。
そして半世紀。
宇宙都市サイド3はシオニズム王国を名乗り
地球連邦に対して独立を宣言したのです。
そして開戦、人類はその人口の半数を失ないました。
戦火の中で人の心は揺れ、刃は運命を断つ。
戦いは一瞬だが――痛みは永遠。
覚悟してね、クベ。」
ドリルが回る音
骨が砕かれる嫌な音
レーザーメスのオゾン臭
色々な雑音が聴こえる・・・かすかに・・・
薄紅の光が舞台を覆い、視界が切り替わる。
⸻
Scene 1 — テキサスコロニー軌道下の罠
(宇宙空間――遥か彼方の岩礁のように大きな物体がゆっくりと回転している。
テキサスコロニー軌道下。宇宙の静寂と赤い星屑の残像。)
ナレーション(オババ)
「宇宙世紀0079─12月28日
光と影が刃となる時、
運命は戦士に微笑むでもなく、
断罪するでもなく、ただ問いかける…。」
複雑な残像の中、
巨大なコロニーの外壁に鋭角に浮かぶ赤いフォルム――
**赤いマグナム(MS‑07R レッドマグナム)**に搭乗するは、
伊藤 赤兎(通称:レッド・ラビット)
黒いバイザーを上げると、その目は燃えるように鋭い。
「ここだ…奴の痕跡は…」
通信が震える。
赤兎
「センサー感度…上げろ。
俺は逃がさん。」
対するのは――
軌道上に待ち構える MS‑14ハクジ
そのシルエットは月光に溶けるように黒光している。
搭乗するは…馬・クベ大佐(幕部 段斗)
「ここが…俺の決戦場か…さて・・・来てもらおうか・・・マグナム」
ハクジのビーム・ランスが点滅する。
⸻
Scene 2 — 第一接触戦
(緊張した静寂を破り、双方MSが急接近)
赤いマグナムのビームライフルが火を噴く。
クベ大佐はハクジで旋回し、鋭くビームサーベルを構える。
赤兎
「貴様…俺の前で…立ちはだかるな!」
クベ(無線)
「運命は…誰のものでもない。
戦いの意味は…越えた者だけが知る。」
MS同士の衝突は激しい。
赤いマグナムのハイパーバズーカが閃光を描くが、
ハクジの高機動でかわされる。
白い軌跡が宇宙塵を切り裂き、
ハクジは赤い機体を追う。
赤いマグナムが一瞬姿を消し、
攪乱する幻影を展開したかと思えば、
黒いハクジがその裏をかく。
ビームサーベル同士がぶつかる。
「ジャキッ…!!」
衝撃は振動となり、宇宙空間に震動が走る。
⸻
Scene 3 — 叙情の回想:樹里亜の面影
(戦いのテンポが一瞬静まる。
赤いマグナムの複合デュアルセンサーがゆっくりと揺れる)
赤兎(内心)
「俺は…
なんで戦っているんだ…?」
俺はデンマークの騎士ではないのか?
渋谷のチーマーではないのか?
何故、こんなロボットを操縦している?
視界は揺れ、遠い記憶へ飛ぶ。
†††††
FLASHBACK — 演舞会のシーン
若き日の 樹里亜 と 赤兎 が踊る。
樹里亜
「あなた、宇宙でも踊れるかしら?」
赤兎
「もちろんだよ。
宇宙だって俺たちのステージさ。」
†††††
瞬間、宇宙服を着た彼女の笑顔が砕けるように消える。
⸻
Scene 4 — 軌道上の再戦
(赤いマグナムが再び射線を切り裂き、ハクジに接近)
赤兎
「俺は…俺は…守りたいものがある!」
残弾がないハイパーバズーカを捨てビームライフルを撃つ。
ハクジは防御態勢を取りながらも、
ビームサーベルで角度を変えながら反撃する。
「ガキィッ…!!」
MS同士の激突が宇宙塵に大きな輝きの軌跡を描く。
⸻
Scene 5 — 割って入る光の介入
その時、宇宙の静寂を切り裂く光が降り注ぐ。
白い閃光が二機のMSを囲む。
光の中から現れたのは──
ベアトリーチェ(もしくはジュリア)の影
(視線はクールで、声は柔らかくて確かな存在感)
ジュリアあるいは(ベアトリーチェ)の無線
「それ以上…戦わせない。」
その声は直接心に届く。
MSのジャミングや通信妨害とは違う。
“意志”としての通信。
赤いマグナムとハクジは一瞬戦意を止める。
赤兎
「…リエ…?!」
マクベ
「…ジュリア…?!
光は二人のMSを優しく包み、
宇宙空間に静謐な静寂を取り戻す。
一つの軽キャノンは二人のモビルスーツの間に割って入る!
ヴォン
二人のビームサーベルが軽キャノンを真っ二つにする!
「この戦いは…
もう終わりよ。」
(白い光がフェンシングのように二つのモビルスーツを照らす)
「僕は・・・ 「俺は・・・
とりかえしのつかない事をしてしまった!」
爆発
無数の光が宇宙を照らす・・・
⸻
Scene 6 — 宇宙服でのフェンシング決闘
(視点切り替え。
舞台は巨大なコロニーの残骸の内部。
朽ちた壁、裂けた鉄骨、漂う小さな塵)
クベと赤兎は宇宙服を着たまま、
向かい合って立っている。
それはまるで フェンシングの決闘 のようだ。
白い靄が二人の周囲を漂う。
赤兎
「俺たちは…
戦うべき相手を間違えていたのかもしれない。」
馬・クベ(クベ)
「戦いは…
刃だけじゃない。
心の奥底で…
すべてを見つめることこそが…」
(静かに、だが確実にブレードが光る)
二人はゆっくりとフェンシングの構えを取る。
互いの刃先が白く光る。
その瞬間――
ニュータイプ領域の対話が始まる。
⸻
Scene 7 — エスパー同志の会話
(無声音だが、直接意志として交わされる)
赤兎(NT領域)
「君の叫びは…
俺の痛みと共鳴している。」
クベ(NT領域)
「そして君の痛みは…
俺の過ちと重なっている。」
二つの意識が交差する。
それは戦いではなく、
理解と和解の衝動だ。
刃が交錯する度に、
二人の心はより深く響き合う。
そして──
⸻
Scene 8 — 決着
刃が交錯する最後の瞬間で、
二人のブレードは同時に砕ける。
激しい閃光が宇宙塵を照らす。
だが、その閃光の中で…
30分後
赤兎も、クベも、艦の冷却装置の中で生きている。
宇宙服は無傷ではない。
だが、ふたりの身体は砕けた刃よりも強い。
赤兎(吐息)
「…これが…
俺の…答え…」
クベ(穏やかに)
「戦いが終わったわけじゃない。
だが…見失っていたものを、
もう一度…見つけた…。」
(星々がふたりを取り囲むように瞬く)
⸻
エピローグ — 光る宇宙と脱出
遠くから艦隊のサーチライトが二人を探し出す。
宇宙は再び静かに動き出す。
オババ(囁き)
「運命は…
断罪するものじゃない。
それは…思い出と共に光る…
永遠の航路よ…。」
赤いマグナムもハクジもなくなった場所で、
ふたりは新たな目的を見つける。
戦いは終わらない。
だがそれは、
憎しみではなく、
理解と共鳴の先へと続く旅。
宇宙世紀0080 1月1日
シオニズム王国と地球連邦との間で終戦協定が結ばれた。
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