『老害』と呼ばれたくない君たちへ

snowdrop

新世代型中高年の逆襲

 昔の「老害」は、会社で権力を握り、若手を「ジジイの壁」でブロックするバブル世代の象徴だった。景気の良かった時代、中高年は自動的に昇進し、定年まで安定、退職金と年金で悠々自適に暮らしていた。

 だが今は違う。

 現在では、「新世代型中高年」と呼ばれる四十〜六十代の現代人が老害に当てはまる世代だ。

 出世の梯子を外され、役職定年で居場所を失い、黒字リストラの標的にされている。Z世代の視線を恐れ、「パーカーおじさん」論争以降、服装すら自粛するほど、他人の目を気にする「弱い立場」の世代である。

 持ってるのは、就職氷河期をくぐり抜けた忍耐力と、少しの小銭だけ。


 この世代のジレンマは痛いほどリアルだ。

 日本の人口の平均中央値が四十九・九歳が示すように、現在の日本は高齢化社会ではなく人口の六〜七割を占める「超中年社会」である。

 社会の新中核のはずなのに、企業は若手優遇で中高年をコストカット。コンプライアンスの名の下、「老害意見かも」と自虐の枕詞を付け、意見を封じる。

 日本政策金融公庫の「女性、若者/シニア起業家支援資金」要件に置いても、融資制度に関して「女性は全年齢(十八歳以上)」が対象であるのに対し、「男性は三十五歳未満、または五十五歳以上」と制限がされ、氷河期世代男性を冷遇している。


 五つの自称老害パターンと呼ばれるものがある。

・アンチロールモデル型(反面教師として自分を戒める)

・自己防衛型(叩かれぬよう先に名乗る)

・支配型(体育会系マインドが抜けない)

・ラブ&ピース型(バブル楽観の「なんとかなる」派)

・脳天気型(空気に流される)

 だが老害は自分で言うものではなく、他人から言われる言葉。

 枕詞など不要である。


 翻弄される心の土台を、再構築しなくてはならない。

 過去の成功や失敗、出会いを振り返り、自分を信じる基盤を固める必要がある。

 実年齢など無視していい。

 大事なのは「主観的年齢」だ。自分が「何歳だと思うか」こそが重要。

 六十歳でも「自分は四十五歳の気分でいる」と思うならそれが正しい。

 主観年齢が若い者は活動的で幸福感が高く、趣味に没頭し、学び続けるデータが有る。一方、「もう若くない」と周囲に囚われれば、孤立と諦めの渦に沈んでしまう。親の「若くないよ」が刺さるのも、そんな心理の罠だ。


 各世代の「壁」も容赦ない。

 四十代は昇進機会が消え、年下上司にプライドを削られる。

 五十代は役職剥奪で「ゆっくりしてて」と追いやられ、腐るか次へ進むかの分岐点に迫られる。

 六十代は再雇用で賃金激減、二十四時間労働スタンダードの会社で足腰が悲鳴を上げ、メンタル崩壊のリスクが伴う。

 欧米のエイジズム法が年齢差別を禁じる中、日本は法整備もなく無防備。企業はベテランの暗黙知を排除し、若手賃上げのコストを中高年に転嫁していく。

 これぞ真の「老害構造」だ。


 だからこそ、逆襲の指針「愛をけちるな」を声高に叫べ。

 会いたい人に会い、やりたいことをやる。

 名誉若者気取りで上ばかり見ず、下(若者)を見て学べ。

 自分を認めてくれる一人さえいれば、心は前傾する。

 新世代型中高年は、老害の亡霊を振り払い、社会を変える「新しい大人」である。

「新世代型中高年ですけど、何か?」と胸を張れ。

 それが、この世代の誇りであり、後半の人生を輝かせる第一歩となるだろう。

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