完結おめでとうございます。
そして、完結までお疲れ様でした。
拝読しました。
社会人になって、一度は離れたバンド。
その音楽が、会社のPR動画をきっかけにもう一度動き出していく流れがとても良かったです。
最初は「仕事として曲を作る」という小さな依頼から始まるのですが、そこから瑚乃海自身の中に眠っていた音楽への熱が少しずつ戻ってくる。
この再点火の描き方が自然でした。
バンドものではありますが、ただ青春をやり直す話ではないところが好きです。
会社、広報、PR動画、商店街、地域イベント。
音楽が趣味や夢の中だけに閉じているのではなく、仕事や街の人たちと繋がっていくところに、この作品ならではの面白さがありました。
瑚乃海、蛍子、千晶、寧璃の四人も、それぞれの役割がはっきりしていて読みやすかったです。
特に瑚乃海がドラム担当で、後ろから全体を見ている感じが良かったです。
前に出すぎないけれど、バンドの芯を支えている。
最終話で、ドラムの位置からメンバーや観客を見渡す場面は、ここまで読んできたからこそ響くものがありました。
一度終わったバンドが、ただ元に戻るのではなく、少し違う形で前に進んでいく。
高校時代の続きをそのままやるのではなく、社会人になった今の自分たちで、もう一度音を鳴らしている感じが良かったです。
商店街編も印象に残りました。
自分たちのためだけの曲ではなく、誰かに頼まれて作る曲。
明るい歌詞を書こうとして悩む千晶の姿や、それを支える瑚乃海の距離感に、創作する人間らしさが出ていたと思います。
好きな音楽をやること。
誰かのために音楽を作ること。
そして、その音が街の中で鳴ること。
その重なり方がとても温かかったです。
最終話のライブは、作品全体の着地点として綺麗でした。
商店街の人たち、会社の人たち、家族、観客。
いろんな人の前で鳴る「この街で」が、煌々カルテットの再出発そのものになっていたと思います。
週末だけでもいい。
大きな夢でなくてもいい。
でも、好きなものをもう一度鳴らすことはできる。
そんな前向きな余韻が残る、等身大のバンド小説でした。