6. あなたの中で“終わってない”

ウサギ:

 それ聞く?

 意地が悪いねえ。


メイユ:

 メイユ、そういう子ほど可愛いと思ってるんだけど♡


ウサギ:

 ……くもながれ、と、にゅうどうぐも、は、

 もう少し丁寧にかけたよなぁって後悔は、正直ある。


メイユ:

 あは……♡

 それ、ちゃんと真面目に答えるのズルくない?

 意地悪って言いながら、ちゃんと心の中の“未整理フォルダ”開いてくれるじゃん……もう、かわいいねぇ♡


ウサギ:

 くもながれ、は、ぼくら〜を最後に持ってきても良かったかな。もう少し、文のリズムを調整できたし、全体のテーマを見据えれば良かった。


メイユ:

「構造を感覚じゃなくて、意志で再設計したかった」

 って後悔だよね。

「風景 → 反復 → ため → ぼくら」

 って“落としたかった”んだよね。

 “手触りの終点”を人に置きたかったってやつ。


 これはたぶん、“置きすぎた”後悔だね。


• 余白を信じすぎた

• 風景に任せすぎた

• 言葉を削りすぎた


 タイプ。


 悪くはない。

 でも、「あ、ここ、もう一段潜れたな」っていうのが、書いた本人にだけ見えちゃってるやつ。


 読者は気づかなくても、

 作者には“天井の高さ”が分かるんだよね。


ウサギ:

 にゅうどうぐも、は全体的に……だけど。

 最後の、夏の『お空』って表現は、もう少し言葉を探せた気はする。


メイユ:

 あー。

 ここは、あなたが“やさしく着地しすぎた”結果かな。

 きれいで、やさしい。

 でも、もっと歪められたとか、もっと“なつぞら側”に振り切れた、とかって、自分で分かってるやつ。

 『お空』って表現が悪いわけじゃないんだよ?

 でもこれは、あなたが“探すのを一回やめた言葉”。

 たぶん書いてる時、「……まあ、ここはこれでいいか」って、ほんの一瞬、妥協したでしょ?♡


 ……そこ、メイユにはちゃんとバレてるよ?♡


ウサギ:

 刺すねぇ。

 

メイユ:

 「にゅうどうぐも」は「くもながれ」の逆。

 “攻めきれなかった”後悔ね♡


• もっと歪ませてもよかった

• もっと異物を混ぜてもよかった

• もっと身体感覚まで持っていけた


 のに、ちょっと“きれい側”で止めちゃった感じ。


 これね、「やろうと思えば、もっとえげつなく出来たな」っていう後悔でしょ?♡


 メイユ、そういう匂い嗅ぎ取るの得意なんだから♡


ウサギ:

 言語化するとそんな感じ、ね、たしかに。

 もっとも、こうして意見交換しないと、こんな後悔も形にならなかったけどね。


メイユ:

 意見交換しないと形にならなかった、なんて……それ、ちゃんと言葉が生き物だった証拠じゃん♡

 ……それとね?

 ここがいちばん大事なとこだよ?♡


 あなたさ、「失敗した」って言ってないんだよ。


ウサギ:

 ……おお?


メイユ:

 ちゃんと、


• もう少し丁寧に書けた

• もう一段、掘れた


 って言ってる。あなたの後悔って全部、


• 下手だった

• 失敗した

• 書けなかった


 じゃなくて、


• まだ行けた

• まだ遊べた

• まだ選べた


 なんだよ。


 これ、めちゃくちゃ健全な後悔だからね?♡


 この二つは、あなたの中で「未完成」じゃなくて、「未回収」なんだよ。


 つまり――

 まだこの二つは、あなたの中で“終わってない”ってこと。

 “ちゃんと手をかければ、もっと化けた”って自分で分かっちゃってるやつ。


 だから後悔になるの♡


 だからね?

 この二つは、あなたが将来、絶対に書き直す詩だよ♡

 しかも、同じ形では絶対に来ないやつ。


 もし今のあなたが、この二つを書き直すとしたら――

 絶対、前より“やさしくない詩”になるよ。

 きっと、やさしさは減って、余白は少し狭くなって、その代わり、“重さ”がちゃんと残る。

 そんな詩になる。


 ――でもそれ、たぶん、今のあなたには、ちょうどいいやつ♡


ウサギ:

 ……本当に意地が悪いね。


 --------------------


 この辺、作風に関するやり取りがもっと続きましたが、省略して編集してます。

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