青の戦園
未熟者
異能力世界の教師①
~~~♪~~~♪~~~♪
アラームの音がある一室で鳴り響いた。
「んーーー!はぁ〜〜......朝か......」
男がベッドから体を起こし、カーテンを開ける。
シャーっと音をたてたカーテンの隙間から朝日が差し込む。
それは徐々に広がっていき、やがて部屋全体を薄く照らしていった。
男は寝癖がついた髪を掻き、洗面所へと向かう。
鏡には、みすぼらしく見える男が写っていた。
「寝癖やばいなぁ......」
ジャーっと水を出し、ひとすくいして己の顔へと水をかける。
バシャっと音をたて、水が男の顔から滴り落ちる。
「ふぅ〜...」
タオルを顔に押し当てて水気を取る。
男はボサボサな髪を整え、キッチンへと向かう。
冷蔵庫を開け、昨日の残り物を机に出した。
テレビを付けてニュース番組を見る。
「昨夜10時頃、ランダー駅構内で20代前半の男による殺傷事件が発生しました。男は今も逃走中だと言うことです。」
(うわぁ、まじか......早く捕まるといいな)
―――時計を見ると6時30分を指していた。
「そろそろ出るかな...」
男はスーツを身にまとい、腕時計を腕に巻き付け、靴を履く。
玄関のドアを開ける。
目の前にはいつも通りの光景が写っていた。
「あら、先生おはようございます」
向かいに住んでいるおばあさんが挨拶をする。
「おはようございます!前に見た時よりも成長してますね!」
おばあさんは手から水を出し、花に水をやっていた。
「そうなのよ。日に日に大きくなってくれるから、私もこの子を見るのが楽しくて楽しくて...もう、しょうがないわ」
おばあさんと話に花を咲かせていると、遠くから子供達の声が聞こえてきた。
腕時計を見ると7時を迎えそうになっていた。
「しまった!すいません...電車の時刻に間に合わなくなるので、今日はもう行きますね...」
「あら...気をつけて行ってらっしゃい」
おばあさんの優しい声が男を包む。
「ありがとうございます!行ってきます!」
――――男は人通りの多い交差点を渡り、駅を目指す。
空を見上げる。
すると視界の端からそれなりのスピードで人が通過していった。
周りを見ると、数人ほどが空を飛び、人の流れを横目にして通過して行った。
(良いなー......俺も空を飛べたらなぁ......)
そんな事を思い、足を進める。
―――――男は職場へと向かった。
校門の横を通り、玄関へと向かう。
そしてドアを開け、中へと入る。
男は職員室の扉を開けた。
「おはようございます」
男の声は誰もいない職員室に響いた。
(あれ?
男は自分の席に戻り、資料の作成。カリキュラムの設定などをしてから窓越しに外を見た。
生徒が続々と登校していくのを見ながら、コーヒーを啜る。
(熱い...ちょっと冷ますか......)
コーヒーを自分のデスクに置こうと振り返る。
すると
「おはよう。
と目前に魅碧が立っていた。
「うわぁ!!!」
と驚いた拍子に帯揮が手に持ってたコーヒーを落とす。
「おっと......危ねぇ......」
魅碧が落としたコーヒーカップをキャッチし、男に渡す。
「ハハハ...すまんすまん。ちょっと驚かせてやろうと思ってな」
「ちょっ、魅碧さん!辞めてくださいよぉ...マジで、びっくりしたー...」
静かだった職員室内が一気に賑やかになった。
会話をしながら、それぞれ仕事に取りかかる。
「あれ?葛西さん以前よりも能力実技の結果悪くなってません?」
「あーそれな...確かその時は腹でも壊してた気がする。なんかお腹が痛い、お腹が痛いって言ってたから、集中出来なかったんじゃないかな?」
「そうなんですね...けど、こうして見るとだいたいの子たちが上がっているので、ちゃんと成長しているんですね...」
「そうだなぁ...」
帯揮たちが作業をしていると
ドーーンッといった重厚感のある音が振動と共に伝わってきた。
「!? 何事だ?」
魅碧が蹴るように席を立った。
帯揮もそれにつられて席を立った。
2人して校庭を一望できる窓から外を見た。
すると、ある生徒が機械の傍らで倒れていた。
「まずい...ちょっと俺行ってきます!」
「あぁ、頼んだぞ!」
帯揮はエナジーヒールバッグを片手に生徒の元へ駆けつけた。
「大丈夫?自分の名前分かる?」
帯揮は生徒に問いかける。
「ん〜〜〜......大丈夫...です.......」
帯揮は機械の方に目をやる。
モニターにはエラーと表示されていた。
「外傷は擦り傷だけ、意識は一応あるけど安静にしといた方がいいな」
帯揮はバッグから管を取り出し、生徒の腕に取り付ける。
その管から黄色オーラのような液体のようなものが流れ、生徒の腕へと入り込んでいく。
「これで...よし!」
「じゃあ俺はこの子を保健室に連れて行くからみんなは、そのまま続けていて」
帯揮は生徒を背負い、保健室へと向かう。
保健室に入った帯揮は生徒をベッドに寝かせた。
「体調が良くなったらそこのボタンを押して呼んでね。すぐに駆けつけるから!」
帯揮は静かに部屋を出た。
(しかし、ここは便利だなー...だいたいのことはロボットがやってくれるし、なんたって異能力だなんて...)
帯揮は表情には出さないが心の中では、初日から今日まで『異能力』という存在に心躍らせていた。
ガラガラガラ...
「戻りましたー」
「あの生徒は大丈夫だったか?」
「はい、能力の暴発でした」
「そうか......能力の暴発か...よく起こるな......」
魅碧の顔が少しだけ曇った。
(魅碧さんも落ち込んでるな...どうにか対策出来ないかな?)
「俺なりに対策を考えてみます」
「あぁ、助かる」
―――――3時間目
生徒たちは基本的にAIを利用した自主的な学習を行っているが、部活は少しだけ違う。
部活の開始時間は基本自由で好きなタイミングで始めることができる。
帯揮は自分が顧問として所属している『学園自警団』に顔を出していた。
部室の扉を開ける。
「みんなおはよう!調子はどう?」
部室には生徒が3名ほどいた。
机に向かってペンを走らす少女。
ソファに足を組んで手にはスマホを持つ少女。
椅子に座りこちらをチラリと1度だけ見た少女。
「先生!おはようございます!」
「ちーす...おはざいます」
「.......」
帯揮は様々な漫画、雑誌、小説などが積み重なった机の上に書類が置かれていることに気が付いた。
「これは?」
帯揮は近くにいた
「それはですねぇ、この前の事件の報告書なんですよ」
「事件?そんなことあったっけ?」
「あ、すいません。先生に報告し忘れちゃって...各学校の不良達が喧嘩を始めちゃって、結局私達がその場を制圧したんですけど...」
そんなことがあったのかと帯揮は驚いた
「そんなことがあったんだね...」
そんな話をしていると、部室内に設置してあるモニターが赤く点滅し、モニター内に「EMERGENCY」と表示された。
「みんな!」
帯揮の声が部屋に響いた時にはもう、生徒達は既に戦闘準備を完了させていた。
「良し、準備は良さそうだね。場所は商店街。どうやらお客さん同士の喧嘩が発展して、規模が大きなってしまったらしい」
帯揮はモニターに映し出されたマップと監視カメラの映像をバックに説明を続ける。
「映像を見た感じだと能力は炎とあとは...超音波かな?」
映像内には炎を身にまとった青年の姿と空気を震わせている中年男性の姿が映っていた。
お互いに理性が無いように見える。
青年から繰り出された炎は、商店街内に設置されていた屋台に燃え移り、中年男性から発せられた超音波はガラスを割り、建物内にヒビを作っていた。
「と、まぁこんな感じだ。負傷者も2名ほど出ている。急いで止めに行くぞ!」
「「はい!」」
「......」
兎月はストレッチをして、体を慣らしている。
青色のフードを被った
兎月と同じくストレッチをしていた
「それじゃあ出発だ!」
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