MIND FIGHT

ppp48games

第1話最強は言った...

 フラッシュライトで目が潰れそうだ。


「なぜ最強と呼ばれるのかって?そりゃ誰よりも,死の淵をさまよったからさ。もし...。もし君たちが僕よりも努力したのなら,僕よりも強くなるだろう。」


 彼の言葉は多くの人々をやる気に満ちあふれさせたと同時に多くの人々を混沌とした世界に引きずり込んだ。

 なぜなら...彼は最強だからだ。



 赤。それも真っ黒な赤。建物の間に押し詰められまるで溺れているかのようだった。


 C君。彼もまた最強によってめちゃくちゃになった人物の1人だった。


「おい、また無視かよw」


 背後から暴力と笑い声。反射的に肩をすくめたが,振り返れなかった。


 言い返しても,事態が良くなったことは一度もない。力がないわけではない。頭が悪いわけでもない。ただ,弱いのだ。ただ,「どう動けばいいか」を知らないのだ。



 僕は,教室の中で目立たない生徒だった。必要以上に話さず,笑わず,前に出なかった。そうすればみんなから愛されると思った。


 入学してしばらくは,それで何も起きなかった。みんなと知り合ってから1ヶ月。少しの友達と話し相手ができた。昼休み,周囲がスマホゲームや動画の話で盛り上がっていたが,僕たちはその輪煮は入らなかった。興味がないわけではない。ただ,話に入るタイミングが分からなかったのだろう。


「静かなやつだな」


 誰かがそう言った気がしたが,悪意はなかったはず。しかし,ここから僕たちの...いや,僕の真っ赤な地獄が始まった。


 ある日,体育の着替え中にクラスで声の大きい男子Aが僕の体操服を指差した。


「それ,B子のじゃね?」


 周囲が少し笑う。僕は一瞬考えたが,何も言えなかった。笑えばよかったのかもしれない。「そうかもな」と返せば、それで終わったかもしれない。だが,僕は黙った。その沈黙は拒否でも反撃でもなく,ただの空白だった。


「……無視?」


 誰かが言う。みんなの馬鹿にしたような笑いがもう一度起きる。B子が

「何してんの!きっも」


 これでみんなの嫌われ者。ただのきもいやつ。ごみ野郎。サンドバッグ。になってしまった。いくら助けを求めようがそこには友達も,仲間も,クラスメイトですら存在していなかった。最初からいなかったかのように。



 というのが僕の妄想である。ちなみに主人公はいじめられているやつではなくそれをただただ傍観している男。そう,僕である。


 みんなは中学校の頃に妄想をしたことがあるだろうか。例えば教室に入ってきた悪党が銃をぶっ放すが,僕が素手で倒すといった妄想。(これは人生でやりたいことランキング第52位)例えば悪党が乗った時速150Kmの車にひかれるが無傷で生存。(これは第4位)といった事が挙げられるだろう。今やっていた妄想には続きがある。



 そんな僕に今,毎日恒例企画。フルボッコ選手権が降りかかっている。そんな中助けてくれた男がいた。


 と思わせて僕はC君を助ける。助けようとした瞬間に殴られ,正当防衛で殴り返す。後で訴えられないようにするため殴られる事がポイント。ということでフルボッコ選手権。通称フル選に参加したいと思う。


 赤。それも真っ黒な赤。建物の間に押し詰められまるで溺れているかのようだった。そんな中,1つの光が......否。1つの闇がさしかかった。


 僕はただの拳を当てたのではない。己の精神を結びつけたパンチを繰り出したのだ。おっとミスった。ポイントは守れなかったが,まぁでも全員潰せばいい。拳にまとわれた暗い闇が赤い空間ごと男子Aの顎を砕く。

「な,何だよお前!」

「いいねぇその顔。ご褒美に新技,公開しちゃうね」

【秘技 精神粉砕マインド・クラッシュ】といったかっこいい名前は後からダサくなるためカット。


「君たちのその赤いオーラみたいなもの。それ,マインドからでしょ。この打撃は僕のマインドから得た力を体を貫通させて直接心にぶち込めるんだ。」


「お,おいやめ...」


 僕の拳から出る真っ黒な闇が彼らの赤いマインドを包み込み破壊する。そして彼らは心臓あたりから爆散した。


「おっと君も目撃者だね。」

 

 そう言って僕はいじめられていたであろうC君も殴り殺した。そして建物の間は静かになった。



 2014年最強,高山大輔たかやまだいすけが死んだ。死後,彼の身体が世界中に渡り研究された。驚くべきことに彼の筋肉,骨,その他もろもろ一般人とさほど変わらないことがわかった。そして研究者たちは悩んだ。なぜあんなにも数々の記録を打ち立てられたのだろうかと。


 2018年とある研究者が大輔のについて発表した。なんと,大輔の感情を司る扁桃体へんとうたいが以上に発達しており,4年たった今でも生き続けているとのことだった。


 それから数年後,扁桃体を使ってあらゆることができることがわかった。心が優秀であればあるほどできないことがなかった。そして人々は気づいた。大輔の言葉は単なる遺言などではなく,自分たちの行動を操っていた呪いなのだと。


 そして今に至る。日本は心の使い方を義務教育にて子どもたちに学ばせた。もちろんよりよい国家を作るためなのだが,善もいれば悪もいる。心を利用した犯罪も同時に多発した。


 2026年警察が心を使った攻撃を犯罪者にできるようになり,悪を封じ込めようとした。



 サイレンが鳴り響く。この虐殺を目撃した人間がいたのだろう。しかし,僕はこんな状況にもかかわらず笑顔が止まらなかった。僕は止まらない。例え警察が僕を殺しに来ても。 僕は最強なんだ。

「負けるはずがない」

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